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第14話

裕之の様子を見て、鈴音は唇を軽く上げて微笑んだ。

「あなた、子どもが欲しいってずっと言ってたでしょう?私が妊娠したのに、どうしてそんなに喜んでくれないの?」鈴音は歩み寄り、親しげに裕之の服を整えながらも、声を低くして囁いた。

「裕之、私、ここに来る時とても気分が悪かったから、プロジェクターに少し手を加えておいたの。だから、もしまた私を不愉快にするようなことを言ったら、私がスマホのボタンを押すだけで、宮崎さんとのラブシーンがここにいる親戚全員の前で流れることになるよ......」

鈴音はそう言って、スマホを裕之の目の前でひらひらと見せつけた。

彼女は柔らかな笑顔を浮かべながら言葉を続けた。「ねぇ、あなた、結婚記念日の夜のこと、覚えてる?」

どれだけ怒りがこみ上げてきても、今の裕之は鈴音に従うしかなかった。

万が一、鈴音が本当に動画を持っていて、親戚たちの前でそれを流されたら、自分の顔も家族の面目も潰れることになる。

「そ、そうだな、思い出したよ」裕之は歯ぎしりしながら、鈴音を睨みつけて言った。「鈴音、妊娠なんて大事なこと、よくも隠してたな!」

「だって、裕之とお義母さんにサプライズをしたかったから」鈴音ははにかんだように答えた。そして、まだ動揺している蘭に向き直り、「お義母さん、もうすぐお孫さんを抱けるんですよ、嬉しいですよね?」と尋ねた。

「え、ええ、嬉しいわ」蘭はぎこちなく笑みを浮かべた。

裕之が寧々を家に連れ込んでから、蘭は寧々を気に入り、いずれ裕之と鈴音を離婚させようと考えていたが、鈴音がこのタイミングで妊娠したことで、計画が狂ってしまった。

とはいえ、産まれてからでも遅くはない。子供ができても、いずれ鈴音を追い出せばいいと考えると、蘭も気が楽になり、寧々に目配せをした。寧々はその意味を理解し頷き、蘭は鈴音の隣に座り、表情を和らげながら話しかけた。

親戚たちはようやく驚きを収め、笑顔で裕之に「おめでとう、お父さんになるんだね」と祝福の言葉をかけ、育児のアドバイスまでしてきた。裕之はそれを聞きながら、まるで苦い薬を飲まされたかのような表情を浮かべていた。

「どういうことなの?」周囲の目を盗んで、寧々は裕之に小声で問いただした。「あなた、彼女が身体に問題があるって言ってたじゃない?まさか本当に関係を持ったの?」

寧々は小声で裕之を責め、
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