第20話

「姉ちゃん？」リンは思わず叫び声を上げた。まさか鈴音がここに来るとは思わなかったのだ。「ね、姉ちゃん、痛くない？」

「痛いに決まってるでしょ！あんたの代わりに私が打たれて、痛くないわけがないでしょ！」鈴音は怒鳴り返し、あまりの痛みに耐えながらも、歯を食いしばり、リンを立たせようとした。

鈴音の登場で、現場は少し混乱していた。

「ちょっと、どこから来たのか知らないけど、今撮影中なんだよ！分かってる？」鞭を持っていた女優が鈴音に向かって怒鳴った。露骨に不満な表情で続ける。「何してんのよ、目が見えないの？本当に礼儀知らずね」

「私は彼女の姉です」女優の態度に鈴音は眉をひそめた。

芸能界の人ってみんなこんなに威張っているのか？

それでも、鈴音は冷静さを保ち、その女優に話しかけた。「私は演技のことはよく分からないけど、当てるフリとか知ってるわよね？こんなに太い鞭でうちの妹に打ち付けるなんて、どれだけ痛いか分かってるの？」

「私が打ったんじゃないわ。彼女が自分で頼んできたのよ」若い女優は鼻で笑った。「自分で、本物の鞭打ちの方がリアルに感じられるって言ってたのよ。信じないなら本人に聞いてみなさいよ！」

鈴音はすぐにリンに顔を向け、その目には「馬鹿な犬もこんなことはしないだろう」という怒りがこもっていた。

リンは肩をすくめ、小さな声で答えた。「この前、彼女の役をうっかり奪っちゃったみたいで、それ以来恨まれてて......少しでも機嫌を取らないと、これから先が厳しくなりそうだったから」

「そんな名門の芸術学校を出ていて、役に困るなんてことないでしょう？」鈴音はリンの額を指で何度もつつきながら怒った。「どうしてこんな愚かな妹がいるんだろう......しかも実の妹！」

「菅野さん、あんた、演技続けるの？」若い女優は面倒くさそうに言った。「本当に時間の無駄よ」

女優は続けて監督に不満を訴えた。「監督、この人を追い出してよ。グループ全体の時間を浪費してるわ。自分で本気で打てって言ったくせに、今度はお姉さんが来て私を責めてくるなんて、なんて理不尽なの」

鈴音は呆れた。

いつ自分が彼女を責めたんだ？

リンも焦ってきて、鈴音に言った。「お姉ちゃん、この役は八百万円かけて手に入れたの。外で待っててよ。たかが一回の鞭打ちくらい、私にだって我慢できる」

「八百万？」鈴音は