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第17話

この食事は波乱含みだったが、なんとか無事に終わった。食事中、裕之は時折怒りのこもった視線で鈴音を睨みつけ、「家に帰ったら覚悟しておけよ」とでも言いたげだったが、鈴音は全て無視した。

鈴音はすでに多くの荷物を家から移しており、もう戻るつもりはなかった。

隣の司が急に低く咳払いをし、テーブルの下で足を軽く蹴られたような感覚がした。鈴音が不安な気持ちで視線を向けると、司は顎を少ししゃくり、そのまま立ち上がってトイレに向かった。

「......」

しばらくして鈴音もようやく理解した。司はきっと今日の件について自分に説明を求めているのだろうと思い、急いでバッグを手に取りトイレへ向かった。

鈴音が廊下に出たところ、何者かが彼女の横を素早く通り過ぎて行った。

顔を上げると、そこにいたのは寧々で、司の前を通り過ぎる瞬間、わざと身体を崩して彼の腕に寄りかかり、胸を彼の腕に押し付けた。

「朝倉様、すみません」寧々はそう言いながらも、司の腕から離れる気は全くなく、甘ったるい声で続けた。「ちょっと足をくじいたみたいで」

司はその場で微動だにしなかった。

寧々は大胆にもドレスの胸元をさらに引き下げ、「朝倉様、ずっとあなたに憧れていました。どうか私をあなたの元で働かせてください」と言った。

「グループにはたくさんの優秀な人材がいることは知っていますが、私は誰よりも努力します。どうかチャンスをください。ニューヨーク支部であなたと一緒に働きたいのです」

「......」

鈴音は、寧々が裕之に惹かれる理由が全く分からなかったが、どうやら下心があったようだ。

「朝倉様、あなたのもとで働けるなら、何でも差し出します。私の全てを」寧々は司の首に手を回し、赤い唇を近づけた。

次の瞬間、寧々の手首に激しい痛みが走り、司に強く引き離された。

司の目には冷ややかな無関心が浮かんでいたが、その視線は寧々を震え上がらせた。

司は冷たく笑って言った。「君はどこにも行く必要はない。辞職が一番だと思うが、どう思う?」

「す、すみません、朝倉様、私が間違っていました」寧々は慌てふためき、このポジションを手に入れるためにどれだけ努力してきたか、ここで辞職するわけにはいかない。「では、失礼します」

寧々が慌てて走り去るのを見て、鈴音は頭を低くし、彼女とすれ違った。

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