夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!

夏目さん、死なないで! 社長のアプローチが始まった!

By:  一笠Updated just now
Language: Japanese
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夏目凛(なつめ りん)は病気で、余命いくばくもなかった。 その日から、凛は悟った――生死の前では、すべてが幻のようなもので、今までこだわってきたことが全てバカバカしく思えてきた。 自分勝手な、タカるだけの家族なんて、いらない! プロポーズしたくせに、すぐに他の女とイチャつく婚約者なんて、いらない! 全てを失った凛は、やっと自由になれた...... それからしばらくして、凛の噂で持ちきりになった。 夏目さんが金持ちを捕まえたって。 夏目さんが若い男と旅行してるって。 夏目さん、超金持ちになって、お金使いまくってるって。 夏目さんは...... 後で、凛に捨てられた人たちは真実を知って、泣きながら土下座して許しを乞うことになるんだ。 金づる扱いをしてくる両親はこう言った。「お前はいつまでも私たちの可愛い娘だ。一緒に家に帰ろう」 クズの元彼は言った。「俺が愛しているのは凛だけだ。もう一度だけチャンスをくれ」と言った。 しかし、もう遅い! 男は凛の前に立ちはだかり、険しい顔で言った。「これ以上凛に近づいたら、足を折る」 そして、あの高位にある男は、凛の前にひざまずいて、こう言った。「生きていようが、死んでいようが、お前は俺のものだ」 霧島聖天(きりしま せいてん)は、自分が善人ではないことを自覚している。 名門霧島家の当主である聖天は、冷酷で、誰よりも早く決断し、行動し、恐れられていた。 誰が想像できただろうか。あんなに近寄りがたい聖天が、一人の女の子を8年間も想い続けていたなんて。 彼の数少ない優しさは、全部彼女に捧げられていた。

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第 1 話

「脳腫瘍の増殖速度が非常に速く、また位置もあまり良くないため、手術の成功率は低いでしょう......」「手術をしない場合、余命は1年未満となる可能性があります」医師の言葉が、いつまでも耳の中で響いていた。夏目凛(なつめ りん)は茫然としたまま病院を出てタクシーに乗り込んだ。手の中の検査結果は、既に皺くちゃになっていた。ようやく、このことを婚約者の佐藤煌(さとう こう)に伝えなければならないと思い至った。凛は携帯を取り出した。画面に触れる指は震えが止まらず、やっとの思いでメッセージを送った。【煌、早く帰ってきて。話があるの】突然、大きな音と共に車が揺れた。慣性で凛は前方に倒れ、頭...

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第 1 話
「脳腫瘍の増殖速度が非常に速く、また位置もあまり良くないため、手術の成功率は低いでしょう......」「手術をしない場合、余命は1年未満となる可能性があります」医師の言葉が、いつまでも耳の中で響いていた。夏目凛(なつめ りん)は茫然としたまま病院を出てタクシーに乗り込んだ。手の中の検査結果は、既に皺くちゃになっていた。ようやく、このことを婚約者の佐藤煌(さとう こう)に伝えなければならないと思い至った。凛は携帯を取り出した。画面に触れる指は震えが止まらず、やっとの思いでメッセージを送った。【煌、早く帰ってきて。話があるの】突然、大きな音と共に車が揺れた。慣性で凛は前方に倒れ、頭
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第 2 話
1時間後、煌が怒りに満ちた様子でやってきた。「凛、一体何を馬鹿なことをしているんだ!」と声を荒げた。そして、視線は凛の頭に注がれた。煌は少し驚き、「怪我をしているのか?」と尋ねた。「ええ」凛は煌を見て、穏やかな口調で言った。「昨日、追突事故に遭って、病院に行ったの」煌の目に一瞬やましい色がよぎり、慌てて凛の隣に座った。「酷い怪我なのか?昨日、俺に話したかったのはそのことか?」「軽い怪我よ」凛は静かに少し距離を取り、ゆっくりと続けた。「婚約の取り消しは本気よ。それと、会社の株式分割についても、私は私のものであるべき株を取り戻したいの......」他人は知らないが、煌はよく分かって
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第 3 話
婚約式当日。佐藤大山(さとう おおやま)が凛を大変気に入っていたため、この婚約式は盛大に執り行われ、多くの名家の友人が招待された。宴会場は華やかな雰囲気に包まれ、楽しそうな笑い声で満ち溢れていた。煌は入り口で客を出迎えていた。顔には笑みを浮かべていたが、内心は焦っていた。もう時間なのに、なぜ凛はまだ来ないのだろうか?大山が近づき、厳しい顔で尋ねた。「また凛と喧嘩でもしたのか?」煌は慌てて否定した。「いいえ、おじい様、ご心配なく」「本当になかった方がいいだろうな」大山は煌を睨みつけた。「凛は俺が認めた孫嫁だ。今日の婚約式で何か間違いがあれば、お前も佐藤家に戻るな!」「ご安心くださ
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第 4 話
「まさか、彼女が婚約式の主役だったとは!」少年は驚きを隠せない様子で、目を輝かせながらステージを見つめていた。「彼女、本当にすごいな!佐藤家がこんな盛大な式を開いたのに、彼女の一言で台無しだ!」「叔父さん、今日の婚約式、来てみて正解だったね!」少年は興奮していたため、聖天の視線が凛に釘付けになっていることに全く気づかなかった。光の届かない聖天の瞳の奥では、複雑な感情が渦巻いていた。ステージ上、煌は慌てて凛の隣に駆け寄り、ぎこちない笑みを浮かべながら、無理やり凛を抱き寄せた。「申し訳ありません、凛は皆と冗談を言っているだけです。場を盛り上げようとしただけなんです」「凛、そうだろ?」こ
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第 5 話
ホテルの玄関を出ると、一人の少年が駆け寄ってきて、興奮した様子で凛に言った。「姉さん、かっこよすぎ!中にはあんなに人がいたのに、佐藤家にも夏目家にも、全然遠慮しなかったね!」「俺が言うなら、あのクソカップルに一人ずつ平手打ちをお見舞いして......」「あなたは誰?」凛は少し呆れた。このミーハー少年は馴れ馴れしすぎではないか?「俺は......」少年は気まずそうに頭を掻いた。「1週間前、俺が運転していた車が、お姉さんが乗っていたタクシーに追突してしまったんだ」「ああ......」凛は気のない返事をした。追求するつもりはなかった。「姉さん......」「輝」聖天に軽く警告され
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第 6 話
「正義感が強いんだろ」輝は運転しながら話に割り込んできた。「姉さんのことなら一目見て分かったんだ。叔父さんに話したら、話に乗っかって助けてやったんだ。彼は人に借りを作るのが嫌いだからね」「叔父さん、俺の言う通りだろ?」聖天は黙っていた。輝は自分の推測が当たったと思い、得意げに眉を上げた。「災い転じて福となすっていうけど、今日はまさにそれだね。姉さん、俺たちに追突されたんだから、この先きっといいことが待ってるぜ!」「運転をミスしておいて、開き直るな」聖天は低い声で言った。輝は照れくさそうに笑った。「姉さんを慰めてるだけだよ。あんな目に遭って、きっと落ち込んでるだろうからね」「大丈夫
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第 7 話
「優奈はお前の妹で、俺は彼女の義兄だ。彼女を気遣うことになんの罪がある?」煌は凛越しに聖天を見て、「お前と霧島社長は一体どういう関係なんだ?なぜ彼は、お前を助けるんだ?」と尋ねた。凛は煌の視線の先を見ると、スーツ姿の聖天が太陽の光を浴びて歩いてくるのが見えた。圧倒的な存在感で、まるで世界が彼の足元にひれ伏しているようだった。煌の質問は、凛と聖天、二人に向けられていた。聖天は煌の敵意を無視し、凛の隣に歩み寄った。「夏目さん、何か困っていることは?」凛は我に返り、「霧島社長、どうして......」と言った。「この間の追突事故で怪我をさせてしまったので、どうしても傷が治るまで見届けなけれ
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第 8 話
1週間の間に、凛は様々な種類の宅配を受け取ったが、全てゴミ箱行きとなった。今日届いた花は、満開の黄色のバラの大きな花束だった。配達員はなんとか花束を抱えて玄関先まで運ぶと、汗だくで言った。「お届け物です」言葉が終わると同時に、ドアが開いた。凛はカードの署名を一瞥し、「下のゴミ捨て場に捨てていただけますか?」と頼んだ。「え?」配達員は驚いた。「こんなにきれいな花なのに......」「邪魔なんです」凛は微笑んでそう言うと、ドアを閉めた。以前は、誕生日と記念日の年に2回しか花束をもらえなかった凛は、その花束を宝物のように押し花にして大切に保管していた。今は毎日花が届くが、もう見るの
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第 9 話
優奈がここに来たのは、凛が株式を分割したがっていると聞いて、お金を持ち逃げされるのを恐れているだけだ。「優奈の好意を誤解しないでくれ」煌は凛の目の前で立ち止まり、少し非難するような目で見ていた。凛は説明するのも面倒くさいと思い、書類を受け取った。凛が自分を見ようともしないので、煌は不機嫌そうに眉をひそめた。すぐに凛は内容に違和感を感じ、煌を見上げて言った。「初期費用だけ?私が担当したプロジェクトがどれだけあるか、あなたは分かっているでしょう?」「これ以上は出せない」煌は平然と言った。「会社への貢献には感謝している。しかし、貢献度に値段をつけることはできないだろう?」......
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第 10 話
考えた末、煌は自分が何度も歩み寄ったせいで、凛がつけ上がってしまったのだと結論づけた。女は甘やかしてはいけない!それから1週間、煌は凛を無視し続けた。この日、会社の株主総会が開かれた。煌は主席に座理ながら社員から第3四半期の業績報告を聞いていた。会議室のドアが突然開いた。凛を先頭に、後ろには多くのマスコミ記者がついてきた。煌は慌てて立ち上がり、「凛、一体何を......」と叫んだ。「別に。ただ株主の皆様には知る権利があると思っただけ。ついでに記者に情報を提供すれば、謝礼ももらえるしね」凛は目を細めて笑った。「こうでもしないと、あなたがくれていた金額だけじゃ、お小遣いにもならない
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