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第13話

私は悠斗に会うとは思っていなかった。しかも、場所は病院だった。

そして、彼が妊娠した女性を連れているとは、さらに予想外だった。

彼は沙也加と婚約を解消したばかりではなかったのか?

「誤解しないでくれ、これは沙也加のせいじゃない」

どういうわけか、今日の悠斗は以前のあの横柄なお坊ちゃんとは違い、親しみやすい雰囲気を醸し出していた。

彼は私の手にある検査結果の紙をちらっと見て、笑顔で言った。「おめでとう、いい知らせだな」

「ありがとう」私は検査結果を見ながら、満面の幸せな笑みを浮かべた。

「ただな、沙也加の母親は厄介な人だから、お前のこれからの生活も大変だろうな!」

ちょっと待て。これって、沙也加と関係があると彼は誤解してるんじゃないか?

「旦那さま、先生に聞いてきたわ。気をつけることが分かったから、もう帰りましょう」

紗英は私を優しく抱きしめ、まるで私が壊れやすい陶器であるかのように扱った。

その様子を見た悠斗は驚いた表情で言った。「えっ、お前誰だよ!」

私は少し困ったように笑って、「これは私の妻、紗英だ」と答えた。

「はぁ?!」

どうやら、悠斗と沙也加の婚約はただの協業であり、お互いに相手を演じていただけだった。

悠斗には本当に愛する人がいたが、家族が反対していたため、沙也加を婚約者に見立ててその場を凌いでいたのだ。

一方で、沙也加も私が次第に離れていくことに気づき、悠斗を使って私を刺激しようとしていたらしい。

「アイツ、協業が決まったら婚約を解消してお前にプロポーズしようとしてたらしいけど、まさかお前が先に結婚してたとはな!」

正直、私自身も驚いた。

「まぁ、結婚して良かったんじゃないか。田村家は複雑すぎるし、沙也加の性格もきついしな。お前くらいしか彼女を甘やかせなかったよ」

私は小さく笑った。素直で裏表のない悠斗は、仮面を脱ぐと意外にかわいらしい一面があった。

「もう過去のことだよ。今はお互いが幸せならそれでいいし、私も新しい役割を受け入れなきゃね」

二人の新米パパとして、お互いに愛する妻の中に育まれる新しい命を見つめながら、顔を見合わせて微笑んだ。

沙也加の連絡先はすべてブロックしていたが、彼女からの電話が再びかかってきた時、それは児玉からだった。

「中川さんから聞いたんだけど......お前の奥さん
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