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第6話

「社長、どういうことですか?中川さんにウェディングドレスとタキシードを選びに行くのは、社長ご自身が約束されたことではありませんか?」

沙也加はただ私を憤然と見つめていた。「いいわ、夏夜、やるじゃない!中川グループとの協業案件、今日の退社前に提出してちょうだい!」

昨日決まったことを今日の退社前に、しかもあと2時間で......

私は平然と彼女を見つめた。「沙也加、これもわざとだろう」

「で、プランはあとどれくらいでできる?」

「今夜、残業します」

「夏夜、あなた変わったわ」

「どこが変わった?」私はわかっていながら聞き返した。

「あなたは......」

きっと言いたいのだろう、私がもう彼女を愛していないことを。

そう言ってしまえば、彼女は私がずっと彼女を愛していたことを認めることになる。そして彼女は、私の特別な想いに甘え、無遠慮にそれを利用してきた。私の真心を踏みにじり、好き勝手に消耗してきたのだ。

しかし沙也加、あなたはその事実を認める勇気すら持たない。ただ慎重に私を探り続けているだけだ。

自分がかつてこんな臆病で浅ましい人間を好きだったなんて、本当に笑える話だ。

「もういいわ。今日は帰って休みなさい。明日でいいから......」

沙也加は探るような視線を引っ込め、疲れた様子で自分のオフィスに戻っていった。

以前なら、私は彼女に笑顔で食事に誘い、肩や首のマッサージをしてあげ、まるで母親のように「ちゃんと食事して、休みなさい」とお節介を焼いていたことだろう。

だが今は、彼女はもうそれほど大事ではない。

上司の許可をもらった私は、急いで荷物をまとめて帰宅する準備をした。

なぜなら今日は特別な日、紗英の誕生日だからだ。

もっと正確に言うと、今日は私たちが出会った日だが、紗英はわがままにこの日を自分の誕生日にしてしまった。

「夫と出会った日こそが私の再生の日!」と、彼女が得意げに言ったのを思い出すと、愛おしさがこみ上げてくる。

彼女の愛はいつも熱烈かつストレートに表現してくれる。

今の私はもう孤児ではない。家族ができたのだ。

下に降りると、見慣れた小柄な女性が目に入った。

紗英はカジュアルな服装で、まるで猫のように飛びついて私の胸にすり寄ってきた。

「旦那さま、今日は私の誕生日だって、忘れてるでしょ?」

「忘れるわけないだろう。元々は残業する予定だったんだけど、まあ、いいか。食事に行こう」

「うん......」紗英はそう答えながらも、私を離さず、唇を私の唇に押し当てながら甘えるようにキスを続けてきた。

「あなたたち、何してるの!」突然、耳元に怒鳴り声が響いた。

私は驚いて振り返った......

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