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第9話

この話題の転換がまたしても突然すぎる。

「本当です」

「私を怒らせるため?」

私は苦笑を浮かべた。結婚したばかりの頃なら、確かにそんな感情があったかもしれない。目の前にいるこの女性を私は7年間も愛していたのだから、簡単に気持ちを整理できるわけがなかった。

しかし、今では多くのことが変わった。時間が経ち、状況も変わっている。

「違います」

「嘘だ!」

「社長、私はそんなことをする必要はありません。第一、どうして自分の結婚を使ってあなたを怒らせるんですか?あなたは私にとってどんな立場の人ですか?そんなことをする資格なんてありません」

「あなたは私を恨んでいるんだわ!夏夜、あなたは私を恨んでいる」

沙也加が取り乱すのを見て、私は深く息をついた。

「沙也加、私は結婚しましたし、あなたももうすぐ婚約する。かつて私がどんな感情を抱いていたとしても、それはもう過去のことです。お互い、それぞれの幸せを願いましょう」

私は書類を彼女の前に置き、振り返って去ろうとした。

「夏夜、もし私が......後悔していると言ったら、あなたは私の元に戻ってくれる?」

驚いて振り返ると、いつもは誇り高い沙也加の顔に、卑屈なまでの哀願が浮かんでいた。

しかし、沙也加、私たちはもう元には戻れないんだ。

......

私は沙也加と悠斗の婚約式の準備を着々と進めていたが、突然、婚約式がキャンセルになったという知らせを受けた。

その理由を探ろうとは思わなかった。ただ、自分の仕事をきちんとこなそうと思っていたのだ。ところが、そんな私にわざわざ面倒ごとを持ち込む人間が現れた。

「パシン!」

立ち上がって挨拶をしようとした瞬間、顔に一発の平手打ちを食らった。

「この泥棒猫、悪女め!全部お前のせいだ!お前が私の娘をけしかけて中川さんとの婚約を破棄させたんだろう!」

「こんなことをして、うまくいくとでも思ってるの?」

「言っておくけど、私がいる限り、絶対に田村家の門をくぐらせるものですか!」

「この悪女が!」

さらに平手打ちを振り上げようとしたその瞬間、沙也加が慌てて駆けつけ、止めに入った。

「お母さん、何してるの、ここは会社よ!」

「沙也加、お願いだから、この男をクビにしなさい!私はもうこの男の顔なんて見たくな
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