共有

第4話

私は笑みを崩さずに答えた。「お金はもちろん大事だよ。だって、生きていかなきゃならないからね」

「実は......」

「沙也加、今日は一緒に......」悠斗が微笑みながらドアを開け、沙也加の言葉を遮った。

「今日はどうしたの?」彼女は婚約者には優しい態度を取り、私に対して見せる冷笑とは全く違っていた。

「今日、一緒に婚約指輪とドレスを選びに行かないか?」

「いいわよ!」沙也加は温かい笑顔で答え、私を一瞥した。「夏夜さんも一緒にどう?」

「かしこまりました......」はあ、ため息が出る。仕事が山積みなのに。

まあ、仕方ない。どうせ私はただの下働きなんだから。

悠斗は挑発的に私を睨みつけ、得意げに沙也加を抱き寄せて歩き出した。ドアのところまで来ると、沙也加が振り返り、私に冷たく命令した。

「そうだ、テーブルのコーヒーが冷めているから捨てておいて」

まだ温かいのに......

......

沙也加と悠斗の婚礼用ドレスを選ぶのは、実に不愉快な仕事だった。特に、悠斗の故意の挑発や、沙也加の冷ややかな傍観は、まるで私を火にかけてじっくりと焼き上げているような気分だった。

彼女のドレスの裾を直し、靴を磨いてメイク直しを手伝い、お茶を運び、荷物を持ち、手を引いて支える――昔の宦官よりもよっぽど尽くしている。

「夏夜、本当に奴隷のような顔をしてるわね」沙也加の冷たい揶揄が耳に響いた。

「ただの普通のサラリーマンですよ」

「サラリーマン?」沙也加は嘲笑混じりに言った。「私には金のためなら何でもする人間にしか見えないわ」

私は少し眉をひそめた。いつからだろう?沙也加の中で私は、金のためなら手段を選ばない男だという印象になったのは。

それはおそらく、あの村田グループとの協業案件からだろう。

あの時、村田グループの年配の女性経営者が、いやらしい目で私を見ていた。にもかかわらず、沙也加はそれを黙認し、彼女が私に次々とお酒を飲ませ、わざと私に彼女をホテルまで送らせようとした。

沙也加は笑ってこう言った。「夏夜、あなたは賢いんだから、うまく逃げ出せるでしょ?」

そう、私は賢い。彼女の計算が透けて見えるのに、その罠に落ちてしまった。

彼女にとっては、私を犠牲にして田村グループに根を張る方が価値があったのだろう。

私は理解していた。この案件が彼女にとってどれだけ重要かを。

彼女が夜遅くまで働いて提案書を修正していたことも。

彼女が田村家の中で立場が不安定で、どうにかして自分の地位を確立しようとしていることも。

私は全部わかっていた。

しかし、沙也加にとって、私だけは重要ではなかったのだ。

その夜、私はひたすら酒を飲み続けた。胃痙攣に苦しみながらも、痛みを耐えて飲み続けた。

私は彼女に無事だと報告しなかった。道端で胃の痛みで倒れ、親切な人に病院に運ばれたからだ。

その後、私は休みを取るために連絡したが、沙也加は私を冷たく嘲笑った。

沙也加、あなたは私を「汚れた」と思ったのだろう。

だが、その時こそ、私は完全に心が折れ、紗英を妻に迎える決意を固めた瞬間だった。

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status