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姉の命日の当日に死んだ
姉の命日の当日に死んだ
著者: 野原ゆい

第1話

母が殺人現場に到着すると、警戒線の外で止められた。

助手がカメラを渡し、状況を説明した。「中に犠牲者がいるらしい。工具を使って逃げようとしていた可能性があるが、具体的な死因は墜落によるものかは、警察の調査を待つ必要がある」

母は無表情でうなずいた。

母は記者として、長年様々な事件の第一線で奔走してきた。

どんな悲惨な被害者を見ても、彼女は動じなかった。

それは私が母を尊敬しているところだった。

だが、彼女は知らない。

今、その中に横たわっているのが私であることを。

私は心焦がれて、早く気づいてくれることを願った。

しかし、母はスマホを取り出し、柏崎結奈とのチャットを開いた。

冷たい表情が一瞬で和らいで、自然と口角が上がった。

「ベビー、ママ今日はちょっと忙しいから、少し遅くなるかもしれない」

私は空中に浮かんで、胸が締め付けられる思いがした。

母が私に笑ってくれたのはいつのことだろう?

どんなに忙しくても、結奈には必ず連絡をするのに、五年間私からの無数のメッセージに対しては、ただ「死ね」と返すだけだった。

助手が近づいてきて、画面の文字を見て言った。「結奈と莉奈は、ずいぶんと久しぶりだね」

母の優しい表情が一瞬で固まり、すぐに暗くなった。

「結奈と会うのはいいが、柏崎莉奈なんて殺人犯に会う必要はない!」

私は母の憎しみに満ちた顔を見て、思わず目頭が熱くなった。

母は相変わらず私を嫌っている。

母は三つ子の私たちを産んだ。

八歳の時、二番目の姉・柏崎優子が階下に突き落とされ、死亡した。

その時、母は泣きながら二番目の姉の遺体を抱きしめ、私に向かって叫んだ。

「お前は悪魔だ!牢屋に入れないと!」

しかし、私はまだ小さかったため、どんなに優秀な弁護士を雇っても、少年院に入れることはできなかった。

母は私を深く憎み、母娘関係を絶って、一番上の姉・結奈と一緒に去った。

私を殺人犯として故郷に残し、見捨てた。

私は喉が詰まり、涙が出ない。

助手が少し戸惑いながら、私のことを弁護しようとした。

「でも、あの時はまだ小さかった。もしかしたら、今は変わっているかもしれないよ……」

母の顔には嫌悪と皮肉が満ちていた。

「あいつは生まれつきの悪種だ。生まれた時に首を絞めておくべきだった」

「同じ母親の子供で、結奈はこんなに可愛いのに、莉奈は災いの元だ。いつか結奈まで殺してしまうかもしれない」

そう言うと、母はこの不吉な話題を終わらせようと、カメラを開き、写真を観察し始めた。

写真の中には私の遺体が写っていた。鮮血が流れ、死後の状態は慘憺たるものだった。

顔と指は硫酸で溶かされ、身元の特定は困難だった。

遺体は高度の腐敗を示し、ネズミに食いちぎられている箇所もあった。

山下が前方で初期の調査を行っていた。

「遺体の顔と指紋は破壊され、胸部には鋭利な武器による傷跡があり、全身には高所からの落下による損傷がある」

「致命傷はおそらく鋭利な武器によるものだ」

母は地面に膝をつき、カメラを片手に、ノートに情報を記録していた。

山下が近づいてきて、軽くため息をついた。

「鈴木、この事件は社会的に悪質だ。情報は警察の調査が進んでから、改めて発表しよう。その際、協力をお願いする」

彼は眉を寄せ、少し忍びない表情を浮かべた。

「おそらく知人に犯行されたと思われる。被害者は観覧車に乗った後、電源が切断され、閉じ込められた。窓を割って逃げようとしたらしいが……」

「どうやって地上に降りたのか、想像もできない。とても強い意志を持っていたらしいが、残念ながら生き延びることはできなかった」

周りの記者たちは一斉に息を呑んだ。

いったいどのような深い怨恨があったら、こんな残酷な方法で小さな女の子を殺害できるのか。

「発見が遅すぎた。少なくとも亡くなってから一週間は経ったと思われる」

母はため息をつき、少し残念そうに言った。

私は勝手に想像した。もし死んだのが私だと気づいたら、彼女は同じように残念がるだろうか?

母はカメラのボタンを押しながら、ある写真で止まった。

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