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第2話

私は緊張した。

それは私のそばに置いてあったコートだ。

五年前、母が私に買ってくれたもので、捨てられずに裁縫師に直してもらって着ていた。

母は私を認識できるだろうか?

彼女はしばらくためらった後、「このコート、私の娘の結奈も同じものを持ってるんだ」

私の喉が渇き、燃えていた希望が一気に消えた。

結奈のためにしたことはすべて覚えているのに、私・莉奈のことは思い出そうともしない。

母はため息をついた。「なぜか、この子を見ると結奈のことを思い出す。年齢や体型が似ているからかもしれないね」

何か共感したのか、母は低い声で怒りを込めて言った。「この人は莉奈と同じだ。生きているだけで世の中の災いだ」

「どこかの隅で、汚らわしく息づいていると思うと、吐き気がする」

身体が冷たくなって、氷の洞窟に落ちたような気分になった。

心が針で刺されるように、細かく痛み始めた。

母は立ち上がり、山下警部を見た。「事件の進展があればすぐに教えて。いつでも記事を書けるようにしてる」

彼女は少し頭を下げ、厳しい瞳に私が見たこともない優しさが浮かんだ。

「最近、娘が落ち着かないみたいだから、早く帰って付き添いたいんだ」

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