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第12話

山下が去った。

母は床に膝をつき、目は虚ろで孤独そのものだった。

しばらくして、彼女は小さな声で啜り泣き始めた。その声は次第に大きくなっていった。

「なぜ私の娘たちは死んでしまい、莉奈という殺人犯だけが生きてるのか?」

違うよ、母さん。

私の喉は詰まり、何とも言えない気持ちになった。

確かに殺人犯は生きてるけど、莉奈はすでに死んでいたんだ。

母の感情は崩壊寸前で、見苦しく号泣していた。

周囲には多くの警察官がいたが、誰も彼女を慰める者はいなかった。

彼女が先ほどどれだけ理不尽に振舞ったか、彼らも見ていたからだ。

いくつかの警察官がすでに事件の内容について話し合っており、結奈が犯人かどうかを推測していた。

母は怨嗟の目で彼らを見つめた。

「お前は彼らに追い込まれて自殺させられたけど、母さんは決して忘れはしない」

彼女はスマホを開き、涙ながらに長い文章を編集し始めた。

結奈が川に飛び込み、警察に殺人犯と決めつけられたことを書いた。そして、本当の殺人犯である莉奈が逃げていることを告発した。

一句一句が血を吐くようなもので、母親が娘の冤罪死に絶望している心情が伝わってきた。

私は悲しみに沈んで彼女を見つめた。

普段は有能な母も、娘を失った悲しみのあまり、理性を失っていた。

メディアの反応により、次々と人々が川辺に集まった。

中には警察への不満を抱く者たちもいて、「結奈を殺せ」というプラカードを掲げる者がいた。

状況はますます混沌としていたが、山下から電話が掛かってきた。

「晴奈、お前は頭がおかしくなったのか?お前の娘が事件に巻き込まれてるんだ!」
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