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第3話

母の後ろについて家に戻った。

結奈が近づいて母を抱きしめた。「ママ、おかえり」

母は目を伏せ、優しい表情になった。「結奈、ただいま。待っててくれてありがとう」

携帯電話が鳴り、母は結奈の前でも躊躇せずに出た。

「莉奈が君のところに来たか?さっき、彼女の大家から連絡があったんだ。彼女が一週間以上家賃を払っておらず、連絡も取れない、部屋にもいないって」

その言葉に、私の目に涙が浮かんだ。

父だった。

長い間、彼も私を許していなかったが、どこかで私を気にかけてくれていたのかもしれない。

母は冷笑した。「彼女が家賃を払うかどうかなんて、私には関係ないわ。橋の下でも路上でも寝てればいいのよ」

父は母の言葉の皮肉を理解し、一瞬沈黙した後、口を開いた。「家賃は私が払った。今週、故郷に行って彼女に会おうじゃないか」

「会うも何も、もう彼女とは何の関係もないと言ったでしょう!」

向こうからは長いため息が聞こえた。

「それでも、彼女は私たちの娘だ」

「娘」という言葉が母を刺激したのか、彼女の顔が青ざめ、ほとんど歯ぎしりをするように言った。「優子が死んだのは、あなたにとって娘じゃなかったの?殺人犯を同情しているつもり?」

一つ一つの言葉が、私の心を刺した。

何度も、二番目の姉を殺したのは自分ではないと説明したのに、母は一度も信じてくれなかった。

父が何か言おうとしたが、母に遮られた。

「言っておくけど、彼女が一日でも生きていれば、私は安心できない。あなたがまた家賃を払うなら、離婚するわ!」

母は乱暴に電話を切った。結奈は母の手を握り、優しく慰めた。「ママ、もうそんなに時間が経ってるんだから、悲しまないで」

「彼女は悪いけど、私にとっては妹だよ」

母の目は鋭さを失い、柔和な表情になった。

赤い目をして、結奈を抱きしめた。「あなたがこんなに優しくて優雅だから、ママは莉奈のような悪人に傷つけられるのが怖いの」

「彼女がまだ生きていると思うと、いつか結奈を傷つけるかもしれない。ママはそんな自分が情けなくて、自分で彼女を牢屋に入れるべきだったって思う」

「だからママは記者になったの。結奈を守るために」

目がしみて、涙が込み上げてきた。

始めから終わりまで、母は結奈を守り続けていた。私を見向きもしなかった。

ましてや、八歳の私をニュースのトップに載せ、私を非道な人間として描き、無数のネットバッシングやいじめを経験させた。

今は私が死んで、もう誰も母の結奈を傷つけないだろう。

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