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第043話

遠くから身を潜めていた林哲也一家三口は、恐怖で全身が力を失っていた。

一方、藤島翔太はすでに医師と共に急患室に入っていた。急患室内では、篠崎葵が昏睡状態で、目を閉じ、眉をひそめていた。長くて濃いまつ毛は涙に濡れ、元々美しいまつ毛も今では力なく垂れていた。

彼女の小さな顔は、発熱で赤く染まり、頬は夕焼けのように紅潮していた。

藤島翔太が彼女の傍に近づくと、篠崎葵はまだ夢の中でうわ言を言っていた。「赤ちゃん......ママを捨て去らないで......お願い......ママにはもう家族がいないの......とても孤独で......付き合ってくれる人がいないと生きていけないの......」

彼女の声は悲しく、哀れで、近くで救護に当たっていた医師たちさえも涙をこらえきれなかった。

藤島翔太は冷たい表情でその光景を見つめ、低い声で質問した。「大容量の解熱薬を使わない場合、急速な物理的冷却しかないのか?」

「はい、その通りです」医師は頷いた。

「物理的に冷却しろ!」藤島翔太の一声で、彼と医師たちはすぐに動き出した。

現代の物理的冷却方法は、昔に比べてずっと進んでいたが、それでも藤島翔太と医師たちは冷たい空間に入ることになった。篠崎葵を冷気のある場所へ移し、男性の医師たちは全員退室した。急患室には藤島翔太と女性医師たちだけが残された。

女医たちは藤島翔太に退室を促す目配せをした。

だが、彼は言った。「俺は彼女の夫だ」

女医たちは何も言えなかった。

藤島翔太は篠崎葵の服を自ら解き始めていた。女医たちは濡れたタオルや綿球を使い、篠崎葵の体の各所に何度も拭いて冷却作業を進めた。

一時間以上が経過した後、篠崎葵の体温が徐々に下がり始まると、医師たちは胎児に影響のない中薬を与えた。

さらに一時間ほど経った後、彼女の体温は正常に戻り、急患室から普通の病室へと移された。

篠崎葵が目を覚ましたのは昼過ぎだった。

その間、藤島翔太は一度も病室を離れなかった。

藤島翔太の助手である谷原剛が一度訪れ、会社の状況を簡潔に報告するとすぐに立ち去った。

谷原剛が去った後も、藤島翔太の携帯は次々と鳴り続けた。

彼は一つ一つの電話に応じた。

「その件はそのまま指示通りに進めろ」

「撤回の余地はない。もし同意しないなら、彼らの会社を全て買収しろ」

「今になって謝罪する気か
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