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第45話 君は彼が好き

痛みと後悔が入り混じる中、奈央は胃の痛みをこらえて階下に薬を買いに行こうかどうか迷っていた。その時、玄関から再び足音が聞こえてきた。

顔を上げると、椿がまた目の前に現れ、驚いて声を出した。

「まだ行ってなかったの?」

「ここに痛み止めしかない。胃薬は持っていないから、とりあえずこれを飲んで」

そう言って、彼は手に持っていた痛み止めを奈央に差し出し、さらに丁寧に熱いお湯まで用意してくれた。

この時ばかりは奈央も素直に薬とお湯を受け取り、一気に飲み干した。

十数分後、奈央はかなり楽になり、身を起こして椿に「ありがとう」と言った。

彼は彼女を一瞥し、表情が陰りを帯びた。しばらくしてから「胃の病気を知っているのに食事をしないとは、死に急いでいるのか?」と問い詰めた。

奈央はもう一口熱湯を飲み、だいぶ楽になったので答えた。

「今日の状況は宇野さんも見てたでしょ?あの時、食事をする余裕があるわけがない」

彼女だって空腹で手術をしたくはなかったが、手術は6、7時間もかかることがある。途中で抜けて食事を取るなんてできるわけがない。そんなことをしたら患者がどうなるのか。

椿は彼女の言葉を聞いて黙り込み、「良くなったか?」と尋ねた。

「うん、だいぶ良くなった」

奈央はうなずき、その後「宇野さんも早く帰って休んで。もう遅いから」と言った。

「助けたばかりで追い出すなんて、君は本当に冷たいね」

椿は彼女をじっと見つめ、この女は本当に情け容赦がないなと思った。

奈央は困惑した様子で言った。

「そんなつもりはなかったの。ただ、もう遅いから、これ以上時間を取らせるのも悪いと思って」

「もう時間がをかかった、今さらだ」

彼は反論した。

奈央は無言で、返すつもりもなかった。わかったから、言う通りにするよ。

沈黙の中、ドアをノックする音が響いた。奈央が立ち上がってドアを開けようとした瞬間、椿が一足先に歩いて行った。

ドアを開けると、外には配達員が立っていた。

「お届け物です」

「うん」

椿は無言で受け取り、配達伝票に記された「戦場ヶ原さん」という文字に目をやると、心の中でわずかな不快感が生じたが、それを表に出さなかった。

持ってきた食べ物をリビングに運び、椿は奈央に尋ねた。

「戦場ヶ原が送ってきたのか?」

「たぶんね」

奈央はうなずいた。彼が確
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