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第45話

葵は最後の一言を聞いて、少し不思議に思った。

裕一は普段、他人の世話を焼く人ではないが、彼は葵に紗枝が戻ってきたことを話さなかった。

葵は賢明にもそれ以上追及しなかったが、心の中では裕一への憎しみが募っていた。彼女はそのまま啓司の方へと歩いていった。

「黒木さん、もうすぐゴールデンウイークだよ。お母さんは今夜一緒に夕食をとるようにって」

葵が言う「お母さん」は、啓司の母親を指していた。

どうせまた二人の結婚を急かし、早く子供を産むようにと言うのだろう。

啓司は顔を上げずに答えた。

「わかった」

葵はその言葉を聞き、オフィスのソファに座った。

「今日は特に用事がないので、ここで待っているね」

一日中?

啓司は彼女を狭い目で見た。

「暇なのか?」

葵は一瞬戸惑った。

彼女が答える前に、啓司は冷淡に言った。

「僕が仕事をしている間、他人がいると気が散る」

葵は言葉を失った。

彼女は立ち上がった。

「じゃあ、外で待ってるね」

啓司はそれ以上何も言わなかった。

葵は不満を抱えたままオフィスを出た。

交際していた頃から今に至るまで、啓司はいつもこんな冷たくて人を寄せ付けない態度だった。

こんな人に無条件で耐えられるのは紗枝くらいだろう。

葵が外で気晴らしをしていると、和彦のオフィスが空っぽになっているのを見かけた。彼女は秘書に尋ねた。

「最近、和彦は来ていないの?」

「最近、澤村家の爺さんが澤村様の結婚を手配しているので、来ていません」

秘書は素直に答えた。

結婚?

葵の心がぎゅっと締め付けられた。

かつて和彦は葵のために、澤村爺さんの要請を何度も拒んでいた。

今、彼が結婚を手配されていると知り、葵は心中複雑な思いを抱えた。

「相手は誰か知っているの?」

葵は探りを入れた。

秘書は考え込んだ。

「澤村家が孫嫁を選ぶのは選りすぐりみたいなもので、普通の家庭の女性は爺さんの目には入らないでしょう」

選りすぐり?

それはまだ決まっていないということ?

葵は少し安心した。

彼女は個室に行き、和彦に電話をかけずにはいられなかった。

長年の付き合いの中で、和彦は一度も彼女に怒ったことがなかった。

この四年間、彼は冷たくしていたが、それには何か理由があるはずだ。

彼女はどうしてもその理由を聞きたかった。

一方
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