共有

第42話

「真弓!」真弓に揶揄われて文哉はノーコン状態になるところだった。

「今、君を注目している人が多い」真弓がさりげなく注意してやった。「続けて恥をかくつもりなら勝手にしろよ」

「お前!」文哉が歯を食いしばった。

この瞬間、周りを一通り見た。

時々、彼を見てささやく人がいた。

文哉は恥ずかしくて堪らなかったので、手を振ってホールを出て行った。

文哉の後姿を見て、笑うのをやめて普通の表情に戻した。

彼女は周りを一通り見て、近くに囲まれてお世辞される達也を見かけて、向きを変えて出ようとした。

今日、達也に頼まれて、彼の人生での重要な場面を立会すると同時に、和彦に会うためにここに来た。

目的達成したので、彼女がこれ以上ここにいる必要はないと思った。

彼女は社交が好きじゃなかった。やむを得ない時だけが行くのだった。

「鈴木さん」横山が突然現れて彼女を呼んだ。「初めまして、僕は樋口社長の助手横山明です。離れないで、待ってって社長に言われて伝えに来ました」

真弓が眉をひそめた。

彼はどうして自分が離れようと分かったのか?!

ずっと囲まれて、気配りの余裕がなかったのに。

「僕はそっちに行きますが、鈴木さんがご自由にどうぞ」横山が話し終わって急いで出て行った。

若奥様が断るのを心配だった。

明らかに若奥様が待ちたくなかったと見えた。

真弓は結局残ることにした。

和彦が喜んで走って来るのを見かけた。「ママ、帰ってないと思いました。僕に付き合ってくれますよね?」

「......うん」真弓が少し気が弱かった。

彼女は帰る計画だった。

「ママ、ホールが嫌いなら、後ろのガーデンに行ってもいいとパパに言われました。ガーデンにはブランコがあります。遊びに行きませんか?」和彦が熱意に誘った。

「いいよ」

和彦が真弓の手を繋いでガーデンに向かった。

2、3歩歩いたところ、向かい側にウエイターが急に何かにつまずき、倒れそうになり、手に持っていたパレットに乗せたワインとシャンパンのグラスが二人に飛んできた。

真弓は急いで和彦を引っ張って、傍へ避けようとした。

それでも、赤ワインがドレスの一部にこぼれてしまった。

「ごめんなさい、ごめんなさい」ウェイターは恐怖で顔色も青白くなった。

真弓は頭を上げてウェイターの傍に立っていた紀子と瑠璃子を見つめた。

ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status