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第45話

「ごめんなさい」紀子がやっと頭を下げた。

莫大な恥で彼女はその場で制御不能になるところだった。

「もういいよ」真弓の微笑みはさらに深くなり、気前よく見えた。

どうせ、このぐらいでは紀子にとって十分だった。

娘が謝ったのを見て、康夫が急いで達也に聞いた。「樋口様、娘を連れ戻してもいいですか?」

「このようなことを、二度としないでね」

「分かりました。戻ってしっかり教育してやります」

紀子を引っ張って、康夫が狼狽な姿で立ち去った。

彼らが出て行った。

ホールの中、元通りに賑やかになり、その中の相当の人達が達也と真弓を見つめた。

二人が離れていたし、何のつながりもなかったのに、どうして一緒になったのか信じられなかった。

でも、事実は事実だった。

「今宵はちょっと忙しい。僕を待ってて、遅くなるが送ってやる」

「いいよ。自分で帰る......」

「大人しくして」達也の声は優しかった。

しかし、拒否する余地がなかった。

この男は優しいが俺様の質だった。

「和彦、ママの世話をしてね」達也が命じた。

「分かりました。パパ」命を受けて和彦がすぐ同意した。

達也は向きを変えて立ち去った。

真弓は急いで離れた達也を見届いた。

こんな忙しい時にでも、彼女を窮地から救出するために躊躇なくやって来たのか?!

感動しないとは嘘だった。

でも、もっと深い関係にはならなかった。

「ママ、ブランコで遊びましょう」

真弓は視線を引っ込めて頷いた。和彦の頭を自然に撫でていた。「和彦、さっきのこと有難うね」

「ママ、どう致しまして。僕は男だとパパに言われました。男ならママを守らなければいけないです」幼い和彦の声が当然のように聞こえた。

真弓の心は温まった。

彼女はしっかりと和彦の手を取り、ホールを出て行った。

瑠璃子が少し離れたところに立って真弓の後姿を見て、目の底に隠された険悪な光が丸見えだった。

彼女は振り返ってお客さんを対応していた達也を見つめた。達也は一挙手一投足で王者の高貴な気質があり、現場にいたすべての男達が手の届かない存在だった。

最初に文哉に消防士だと間違って紹介された。本当の身分を分かってから、彼への感じも180度逆転した。特に先ほど文哉に会いに行った時に、文哉が達也の前でとても弱い存在となっていた。

瑠璃子の心が突然
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