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第40話

安田礼子の傲慢な姿を見て、紀子の顔が暗くなった。

この女が今夜の宴会に来る資格があるのか?!まさか風見メディアのドラマのお陰で、彼女が旦那様の誕生日祝いに歌ったり踊ったりしてお祝いをするのか?!

エンタメ業界では、紀子は無名だが、家族の背景があり、誰かを敬服することがなかった。一流俳優の安田礼子にしても。

礼子がここまで有名になったのは、どのぐらいの人に闇ルールを使われたのか分からないほどだろう。こんな女に笑われる筋合いはない。

「千葉さん、自愛せよ」雄一がメモをもらわず、一言を残して離れた。

紀子が怒って体が震えた。

今回の宴会で、彼女は大変腹立っていた。

瑠璃子はこの時敢えて紀子に近づかなかった。怒らせるのが恐れるだけでなく、紀子が恥をかいたら、彼女まで巻き込むので、避けた方がよいと思った。

丁度その時。

ホールには主催者の声が響いた。

誕生日パーティーが間もなく始まる。

全ての人がステージの中央に目を向けた。

和彦もデザートを食べてから迎えられて行った。

「皆様今晩は。僕は今晩の司会者の高橋文生です。お忙しい中、樋口旦那様の古希の祝宴に来て頂き、誠にありがとうございます......」

司会者が熱意を込めて宴会の挨拶をしていた。

「これから、今宵の主役に来て頂きます。樋口陸様のご登場をお願いします!」

会場には熱烈な拍手が響き渡った。

樋口陸が達也に推されてステージの中央に来た。傍には真面目に立ったのは和彦だった。

全ての注目が彼らに集まった。

文哉の顔色が直ちに変わった。

どんなに鈍くても、この瞬間の異常に気付いただろう。

「瞬く間に俺は70歳になり、もう定年しなくてはならなくなりました!誕生日を機に、俺の孫、樋口達也を紹介させて頂きます。彼は今後北城に残しますので、是非ご支援のほどよろしくお願いします」旦那様の声が少し老けたが、言葉には重みがあった。

つまり、樋口グループのことをすべて達也に託すとのことだった。

司会者がマイクを達也に渡した。

達也は会場の人達を見渡して、落ち着きがあり、イケメンで、本当に天下を取るような気魄だった。

「皆様、樋口達也と申します」達也の声は低くて魅力的だった。

文哉はこの瞬間、跪くところだった。

彼は本当に樋口達也だったのかよ?!

ずっと見下した消防士は樋口達也なんて?!
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