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第39話

真弓が和彦の手を取り、宴会の隅に向かった。

ボディーガードが後ろについて、距離を置いていた。

和彦が嫌いだったから。

真弓が真面目に和彦にケーキを選んだ。

「姉さん、子供も連れ込んだのか?!」瑠璃子が紀子をお供をしてデザートを食べていた。

先ほど凄く怒っていたので、落ち着くには結構時間がかかった。

また真弓に出くわした。

「瑠璃子、お父さんに言われただろう。今日の宴会は特別で、失礼な行動を取らないでね。ひたすらでたらめなことをしたら、私が何か変わった行動をとるかもしれないよ」真弓が忠告した。

真弓に言われて瑠璃子の顔色が一瞬変わった。真弓を怒らせることを敢えてできなかった。

紀子は真弓を恐れなかったが、突然井上雄一が宴会に入って来るのを見かけて、急いで向かって行った。

今宵ここに来る主な目的は井上雄一に会うためだった。

雄一は樋口グループ傘下企業の風見メディアの知名度高い監督で、彼女がヒロインから替えられたドラマの監督だった。勿論、監督ではこんなレベルの宴会に招待されない筈だが、彼はもう一つの身分があった。孤児で旦那様に引き取られ、ずっと旦那様の傍で育てられ、旦那様に大切されていた。

「井上監督」紀子が挨拶した。

雄一が紀子を見つめた。

同じエンタメ業界で、勿論知っていた。

「千葉さん」雄一が挨拶した。

「どうして急に私を替えたのか教えていただけませんか?」紀子が単刀直入に聞き出した。

「これは会社トップの決断で、具体的な原因が僕も分からない」

「監督は風見メディアの株主じゃありませんか?」

「つまり、これは樋口グループの決断だ」雄一が説明した。

「樋口グループ?」紀子の顔色が暗くなった。

風見メディアは昔から独立運営していたじゃないか?!

「まさか戸川がインチキをしていたのか?」紀子が呟いた。

この前、戸川に詰問した時に、否認された。

「もう一度戸川に聞いたらどうだ」雄一が対応したくないから、後ろの方向に指差した。

戸川と佐藤信夫が一緒に宴会の入り口から入ってきた。

彼らはこのような真面目な宴会を参加したくないが、達也にとって非常に重要な場面なので、遅くなったが、皆がやってきたのだ。

「井上監督」紀子が直接雄一の前に佇んだ。

雄一が少し苛立った。

とは言え、それは明らかではなかった。

「監督と樋口グルー
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