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第38話

「でも、何ができるの!?」文哉が続けて揶揄った。「まだ......下町の人だ!」

真弓は冷たく文哉を見て、話そうとしたが。

達也が突然ホールから歩いてきた。

真弓が目を向いた。

文哉も見かけた。やってきた人が微笑んだ。

文哉の親友たちも歩いてきた。「樋口達也」の傍の男が文哉に近づいたので、何か文哉に話そうと思って、皆が集まって、達也との関係構築にチャンスを見つけ出したいと思った。

「文哉、彼は誰だ?」一人の御曹司が聞いた。

この男の気魄が大きすぎて、身分を確定できなかった。

文哉がちらりと見て、軽蔑に言った。「樋口社長のボディーガードで、昔は消防士だった」

「そうか?」一人の御曹司が疑問そうにコメントした。「この時世の消防士はこんなにイケメンだったのか」

「イケメンで何ができるの?」文哉があんまり気にしなかった。

達也が文哉を睨みつけて、真弓に近づいて声を低くして言った。「和彦がこれからお爺さんについてくるので、彼を待ってってと言い伝えできたの」

「いいよ」真弓が頷いた。

「ちょっと忙しいから、行くね」

「気にしないで」真弓が当然分かっていた。

今日は達也の正念場だったので、対応する相手がきっと沢山いるだろう。

達也が向きを変えて離れた。

御曹司達が彼の後姿を見て、感心して嘆いた。「この格好ではただのボディーガードだったのか?!」

このボディーガードの身元は簡単ではないだろう。

その時。

ホールがまた静まり返った。

入り口に騒いでいた。大物がやっと登場した。

皆の視線が入り口に向けた。樋口旦那様が車椅子に座り、皆に囲まれて入って来た。

旦那様がよくビジネスサークルに出席したので、知り合いが沢山いたのは当然だった。

旦那様が来るのを見て、皆は挨拶しに行った。

瞬く間に、旦那様が人群れの中に消えて行った。

真弓も一群れに向かって行った。

「真弓」文哉が真弓の腕を掴んだ。

真弓が眉を顰めて、力込めて振り払った。

「身を弁えて、恥をかくのをやめてくれよ」文哉は真弓が旦那様に近づくのを見て彼女を止めた。「今挨拶に行くのは、目上の人達か、もっと目上の人達なんだ。君はいつからこんなルールを守らない人になったのか!」

「私がルール知らないなど、君に指図される筋合いはない」

真弓が離れた。

文哉が拳を握り締めた。

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