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第26話

瑠璃子が力を込めてジッパーを上げようとした。

紀子も吸い込みし続けたが、どうしてもジッパーを上げなかった。

「紀子、本当に上げない」瑠璃子が諦めた。しようがなく言った。

「ありえない!私の腰がこんなに細いのに!」紀子がこのショックをまったく受け入れなかった。

着れないと、真弓にどれ程揶揄われるか、想像するだけで耐えられなくなった。

「本当にダメだ。これ以上引くと壊れてしまう」

「壊れてもいい、力込めてやって」

「万が一壊れたら、本当に真弓に嵌められると思うよ。きっと賠償してもらうわ」

「今着られなくても、私に払わせるじゃないか!」紀子が声を低くして歯を食いしばって言った。

「腰が細い君でも着られなくて、真弓ならきっと着られないだろう。二人とも着られない場合、君を笑う資格は彼女にあるのか。払わなくて済むだろうね」瑠璃子が険悪そうに言った。

紀子が一瞬唖然としたが、すぐに正気に戻って言った。「早く脱いでくれ」

「わかった」

二人は決心して、試着室を出た。

真弓は隣のソファに座り、和彦と一緒に軽食を食べていた。

彼女は頭を上げて、口元が微かに動いて皮肉な微笑みが浮かんでいた。

紀子が怒りを抑えて、挑発的に言った。「真弓、私は本当に着れない。でも、私が着れないから君が着れるとは限らない。もし着れるなら、払ってあげるよ」

真弓がゆっくりとおやつを食べ終わって、コーヒーコップを持ち上げて大きく一口飲んだ。

紀子の顔色が暗かった。

彼女はさっき、どのように息を吸い込んでも着れなかったが、真弓はまだそんなにたくさんの物を食べていたのか。

真弓は口角を拭き、和彦に外で大人しく待つようにと言って、試着室に入った。

これと同時に。

文哉は急いで店に入った。

「文哉君」瑠璃子が急いで駆け付けた。

紀子が戸惑った。「どうして来たの?」

「私がショートメールを送ったの」瑠璃子が急いで言った。「姉さんと不愉快になり、姉さんは強気で、紀子に損させたくないから文哉君に来てもらった」

紀子は真弓のことを真剣に受け止めなかったが、瑠璃子からの世話を拒む必要はなかった。

実際。

瑠璃子はもちろん、紀子のことを心配したじゃなくて、ただ文哉に真弓と紀子の争いを見てもらい、真弓へ断念させたかった。

その時。

試着室のカーテンが引かれた。

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