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第29話

向こうから返事が来なくなった。

真弓は唇をすぼめて、振り返って和彦を見た。「和彦、今晩お父さんが残業するので、私と帰ってもいい?」

「よっしゃ」和彦が少し興奮した。「ママの家に遊びに行きたいです」

真弓は口角を軽く引き上げて、和彦の小さな頭を優しく撫でた。

家に帰ると、真弓は和彦に動画を見て貰って、そして和彦のために夕食を作ろうと思った。

長年一人で海外生活を送っていた彼女は、お金稼ぎに忙しくて、自分で料理をする時間がなく、お金がないときはカップ麺を食べたり、お金があるときはデリバリーを頼んだりしていた。

しばらく考えた末、やはりデリバリーを頼むことにした。

高級レストランのデリバリーなら、食品の安全問題を心配する必要がない。

真弓は和彦の傍に座って、真剣に料理を注文していた。

「ママ、チャンネル変えてもいいですか?」和彦が聞いた。

「自分で選んでいいよ」真弓は目前のリモコンを指差した。

和彦がリモコンを手に取り、チャンネルを変え始めた。

注文に没頭した真弓は携帯を置いて頭を上げてみると、和彦がハイテクチャンネルを見ていて、丁度宇宙戦艦について紹介されていた。

「和彦、分かるの?」真弓が不思議に聞いた。

「もちろんです」和彦が自然に回答した。

「......」

午後7時、二人は一緒に夕食を食べた。

和彦の躾がよかった。彼は礼儀正しく食事をしていた。

食事後、和彦が積極的に真弓とテーブルを片付けて、そして真弓を誘って、エンタメチャンネルを一緒に見ていた。

ソファに寄り添った二人は、とても暖かく見えた。

「安田礼子だ」和彦がテレビの画面に出たリアリティー番組のスターを指さしながら喜んで言った。

真弓も微笑んでさりげなく聞いた。「彼女が好き?」

「好きです」

「見る目がいいね」真弓がコメントした。

安田礼子は確かにきれいで、エンタメ業界で数少ない純粋な役者だった。

「パパも好きですよ」和彦が付け加えた。

「......そうか?」

「うん」和彦がしっかりとうなずいた。

9時までテレビを見ていた。

和彦があくびをした。

真弓は達也にもう一通のショートメールを送った。「後どのぐらい終わるの?」

「和彦は夜の9時半前に休むので、まずお風呂に入ってもらって、僕はすぐ迎えに行く」

「......うん」

真弓は
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