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第10話

「君は重傷だったんだ。あと少しで命を落とすところだったんだぞ。無理に動くな」

医者は眉をひそめながら、俺の手を離した。

その瞬間、俺はまるで深海から浮上して、ようやく呼吸が自由になったように感じた。周りには、規則的に滴る医療機器の音が響き、腕に刺さった点滴の針から冷たい液体が体に流れ込んでいる。

俺は目を閉じて、思考を落ち着かせようとしたが、頭の中はまだ夢の映像でいっぱいだった。あまりにもリアルすぎて、涙が自然に頬を伝い、首筋にじっとりと張り付いた。「青葉......友樹はどうなったんだ?」

青葉は俺の手を強く握りしめた。「大丈夫よ。さっき様子を見てきたけど、まだ目は覚ましていないけど、もう危険な状態は脱した」

一週間後、俺は歩けるようになり、暇さえあれば友樹の病室を訪れて、最近話せなかったことをたっぷり話してやった。

俺は友樹に、自分が見た夢のことを話した。すると、驚いたことに、友樹も同じ夢を見ていたと言うんだ。

ただ、彼の夢では、俺が彼を助け続けていたらしい。

入院している間、俺はあの夢に出てきたパラレルワールドのことを何度も思い返していた。

量子論の「多世界解釈」という仮説が頭をよぎった。もしかして、あの世界で俺たちは本当に冒険をしていたのかもしれない。

さらに一週間が過ぎ、俺たちは無事に退院した。

そして、未完成だった計画を補うため、そして生還を祝うために、再びキャンプの計画を立てた。

予想もしなかったのは、友樹が青葉の同僚と一目惚れしてしまったことだ。

友樹は、とうとう人生初の恋を迎えることになった。長らくソロだった男に、ついに春が訪れたのだ。

半年後、俺と友樹は正式にルームシェアを解消した。

不動産屋が上下の階を貸し出している物件を紹介してくれて、俺たち4人は新しい隣人生活を始めることになった。
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