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第6話

「ガンッ!」という音がして、俺は思い切り鉄のドアにぶつかった。

目の前がクラクラしていたが、何とかドアを押し開けると、そこには階段があった。俺は手すりにしがみつきながら、下へと進んでいった。

何度も階段を回り、やっと平坦な廊下にたどり着いた。前方に微かな光が見える。おそらく、防犯ドアだ。ここを抜ければ、外に出られる―そう思うと、少しだけ安堵した。

しかし、近づいてみると、それは全く外ではなかった。またしても、全く同じような暗い廊下が広がっていた。

違うのは、廊下の奥に鏡が掛かっていることだった。

俺は鏡の方へと向かった。すると突然、鏡に友樹の姿が映り込んだ!

あの恐怖の笑顔が再び―しかも、今度は口から10センチ以上も垂れ下がった長い舌が見える!

俺の前には誰もいない。ということは、友樹は俺の背後、見えない闇の中にいるということだ。俺は恐怖に駆られ、鏡の方へと全速力で走った。

しかし、鏡の中の友樹も同じようにこちらに向かって猛スピードで近づいてくる。

もうすぐ鏡にたどり着くというところで、ふと何かが引っかかった。

この鏡には友樹しか映っていない―俺自身が映っていないんだ。

友樹は俺の背後にいない!鏡が俺を引き寄せようとしているだけだ!

その瞬間、青葉の声が脳裏をよぎった。

「鏡を信じないで」

俺は急ブレーキをかけ、反対方向に向かって全力で走り出した。

背後からは、俺の名前を呼ぶ声が次々に響き、耳を殴りつけるようにこだましていた。

それでも俺は振り返らず、ただ前へと必死に走り続けた。

その時、右前方の「103号室」と書かれたドアが突然開いた。

そこから顔を覗かせたのは、優しい笑顔の老婦人。「坊や、早く入りなさい。ここなら安全だよ」と手招きしてくる。

このおばあさんはよく知っている。1階に住む独り暮らしの老婦人で、可愛い猫の「王子」を飼っていた。彼女はいつも王子と一緒に外のベンチで日向ぼっこしていて、俺も早く帰れた日は一緒に座ってお喋りすることがあった。

おばあさんが危険なわけがない。俺は少しでも安全だと思って足を踏み入れようとした。

だが、一歩足を踏み込んだ瞬間、リビングの真ん中に王子が座って俺を見つめ、「ニャー」と2回鳴いた。

......おかしい。王子は先月、年を取って亡くなったはずだ。

偽物だ!これもまた偽物だ!

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