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第4話

スマホの向こうからため息が聞こえ、俺の回想が中断された。「智彦......もう手遅れよ」

「何が手遅れだって!?」ドアの外から金属がこすれるような鋭い音が聞こえ、耳をつんざくように痛みが走った。

「バンッ!」と大きな音がして、どうやら友樹が自分の部屋に戻ったようだ。

それと同時に、また『一緒に踊ろう』が隣から流れ始めた。いつもなら楽しい曲が、今はただ不気味でしかない。

「智彦、さっきあなたが部屋のドアを開けた時、実はパラレルワールドに入ったのよ。私がいなくなってた間、ずっとその世界に閉じ込められていたの。この世界は危険よ、智彦。それは、私たちを殺そうとしてる!」

頭が真っ白になった。彼女は一体何を言っているんだ?誰が俺たちを殺そうとしてるんだ?

質問する間もなく、青葉の声が続いた。「智彦、これから言うことを絶対に忘れないで。

他の人は外から君の部屋のドアを開けることはできないけど、ガラスを通り抜けてくるわ。

必ず階段で逃げて、絶対にエレベーターに乗っちゃダメ。

生き残るヒントは、時に闇の中に隠されている。

鏡を信じないで。

偽物には必ずほころびがある、細かいところをよく見て。

それと、もし『一緒に踊ろう』を歌ったら、それは......」

青葉の声がどんどん焦り始め、最後の言葉を言い切る前に電話は切れた。

世界がまるで一時停止ボタンを押されたように静まり返った。電話は切れ、ドアの外からの鋭いノイズも消え、音楽も止まっていた。再びかけ直しても、もう誰も出なかった。

俺は壁にもたれて立ち上がり、冷静に青葉が言っていたことを整理しようとした。

そして、一つ信じ難い事実に気づいた。俺は、本当に別の世界に入り込んでしまったのかもしれない。ドアの外にいるのは、あの友樹じゃないし、ここは俺の家じゃない。

誰が、俺たちを殺そうとしてるんだ?

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