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ドア
ドア
Author: 不老松

第1話

俺はプログラマーだ。仕事のストレスは半端なくて、休むときはホラー映画を見てリラックスするのが好きなんだ。刺激もあって、気持ちも落ち着く。

土曜の夜、俺は妹が義兄を好きになって姉を殺すっていう、まさにクソ展開の映画を見ていた。

姉が真っ赤な花嫁衣装で復讐に来るシーンが始まったところで、友樹の部屋から突然、古い曲が大音量で流れてきた。『血塗られた愛』ってやつだ。昔はよくリピートしてたけど、こんなタイミングで聞くと心臓に悪い......

俺は心拍を落ち着けてから、友樹の部屋のドアをノックした。「おい、友樹!音楽の音、下げろよ!ビビったじゃんか!」

友樹はゲームをするとき、音楽を爆音で流しながらヘッドホンでプレイする癖があって、それがゲームのBGMみたいで最高だとか言ってたけど、ただのノイズキャンセリングがダメなだけだろう......誕生日に新しいのでもプレゼントしてやるか。

何度かノックしたけど返事がない。どうせゲームに夢中で無視してるんだろうと、俺はそのまま映画に戻った。

数分後、映画の冥婚シーンが始まった。いよいよ式が始まるってところで、友樹の部屋からまた音楽が変わった。今度は不気味な『祝い』だ......

伊藤友樹は大学時代からのルームメイトで、一番の親友でもある。彼は昔からいたずら好きで、こういうことをやらかしても全然驚かない。でも、あの選曲だけは、さすがに俺の心をゾクッとさせた。

もう一度、思い切りドアを叩いた。「おい!さっき俺の部屋覗いてただろ?無視してんじゃねぇよ!さっさとドア開けろ、音止めろ!」

音楽がピタッと止んで、友樹が寝ぼけ眼でドアを開けた。「なんだよ、叩くなよ......昼寝中だったんだぞ」

「昼寝だと!?音楽大音量で流してて寝れるわけないだろ!」

「は?音楽?俺、音楽なんかかけてないけど......」友樹は頭を掻きながら、面倒くさそうに答えた。

「嘘だろ、俺がドア叩いた途端に止まったじゃん。冗談はやめてくれよ......」

友樹にイライラさせられて気が散った俺は、結局パソコンを閉じて寝る準備をした。

だけど、またしても音楽が鳴り出した。今度は『一緒に踊ろう』って曲だ。イライラしながらスマホを見て、友樹にメッセージを送った。「おい、深夜12時だぞ!誰と踊ろうってんだよ?さっさと寝ろ!」

メッセージを送ると音楽はピタッと止まった。ほっとして目を閉じたが、またしてもスマホが鳴り響く。

このままじゃ、眠れない。頭がガンガンして、もう神経が限界だ......

友樹からだと思ってメッセージを確認すると、画面に表示されたのは、3ヶ月前に俺をフッたあの彼女、藤井青葉からのメッセージだった......

メッセージの画面には、たくさんの緑色のメッセージボックス。その下に、一つだけ白いボックスが目に入った。

「智彦、絶対にドアを開けないで!」

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