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第2話

完全に目が覚めた。

3ヶ月前、青葉がいきなり俺に別れを告げた。理由は同僚に惚れたからだと。あいつの方が俺より優れてるって言ってな。

それ以来、連絡は一切取れなくなり、電話も無視、メッセージも返ってこない。正直、俺はもう浮気されてたんじゃないかって思ってた。

でも、さっきの「ドアを開けないで」ってどういう意味だ?何のドアだよ?

とりあえず、青葉に音声メッセージを送ってみたが、応答はなし。さらに何通かメッセージを送ったけど、それも無視されたままだった。

暗闇の中でポツンと表示されたあの白いメッセージボックスが、なんだか不気味で仕方ない。

訳が分からず混乱していると、突然玄関の方からAIの声が響いた。「パスワードエラー」その瞬間、俺はビクッと飛び起きた。

俺と友樹は大学を卒業してから二人で二部屋一リビングのアパートをシェアしている。普段はお互いのプライバシーを大事にしていて、ドアは基本的に閉めっぱなし。だから外で何が起こってるのか全然見えなかった。

慌てて友樹にメッセージを送った。「おい友樹、聞いたか?なんか家のドアを開けようとしてるぞ!」

でも、やっぱり返事がない。もう直接電話しよう。

立て続けに2回かけたが応答なし。さっきまで音楽鳴らしてたのに、どうして急に寝るんだ?まったく、あいつはホントに豚だな......

玄関からは「パスワードエラー」の声が何度も繰り返され、どんどん急かされるように聞こえてきて、背筋に寒気が走った。

何か確認しようと思って立ち上がった瞬間、頭に浮かんだのは、さっきの「絶対にドアを開けないで」という青葉のメッセージ。

一瞬だけ迷ったけど、俺はドアノブを掴んでいた。

だって、このメッセージ、いきなり過ぎて意味不明だろ?何を怖がる必要があるんだ?

その瞬間、「パスワードエラー」が突然「パスワード認証完了」に変わり、玄関のドアが開いた。俺は反射的に近くにあったモップを掴んだ。

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