共有

第17話 これからが本番よ

萌美は何人かの貴婦人と話しながら、紅葉が堕落したことを遠慮なく話題にしていたが、彼女が再び宴会場に戻ってきたのを見つけ、口元に冷笑を浮かべた。

本当に哀れね。あんな屈辱を受けても、まだ戻ってくるなんて!

萌美が言葉を発する前に、緑川夫人が紅葉の腕を掴み引き寄せた。

「長峯さんに十数回もビンタしておいて、それで終わりにするつもり?彼女に謝りなさい!」

「彼女は浮気相手よ、叩かれて当然じゃない。謝らないわ」

紅葉は緑川夫人の手を振り払って、遠慮なく答えた。

先ほどの惨めさとは打って変わり、今の紅葉は堂々としている。

萌美は、紅葉がトイレに行っただけでどこかから自信を得たことに気付き、少しばかり委屈そうに言った。

「紅葉、私たちは友達よ。そんなことをしたのに、まだ私を陥れるつもり?」

先ほど、輝和も紅葉はただの同伴だと明言していた。

「陥れる?」

紅葉は冷たく笑い、萌美に近づきながら言った。

「親友として、私の元夫に手を出さなかったと誓えるの?三歳の子供がいるのに?」

紅葉の鋭い眼差しに、萌美は身震いし、紅葉を力強く押し返した。

「やってもいないことを、誓う必要があるの?」

紅葉は冷淡に言った。

「誓えないのは、やましいことをした自覚があるからでしょう?」

「…」

「森吉さん、私たちや他の皆はちゃんと見ていたわよ」

緑川夫人が言った。萌美の側に立っていた。

「浮気をしたのは森吉さんの方。本当に恥知らずだわ。長峯さんがそんなことをするはずがないじゃない!」

「そう?」

紅葉は眉を上げ、淡々とした笑みを浮かべた。

「面白いビデオを手に入れたの。みんなで一緒に見てみようか」

紅葉が話し終えた途端、宴会場中央の巨大なスクリーンが急に明るくなった。

スクリーンに映し出された映像には、まずホテルでの時久と萌美の会談の様子が映っていた。二人の会話がはっきりと耳に届く。

「でも時は本当に残酷ね。一銭も紅葉に残さないなんて。彼女のおばあさんが使っている薬、すごく高いんだって」

「歳を取った老人など、死んだ方が楽だ」

「でも養父母にまで手を下すなんて、本気?」

「……」

画面が切り替わり、時久の車がある別荘に到着。萌美が子供の手を引いて出てきた。子供は時久に駆け寄り、「パパ!」と甘い声で呼びかけた。

映像はほんの十数秒しかなかった
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status