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第23話

その日から、麻生恭弥は彼女の家のテイクアウト配達員となった。

彼女は買物が不便なので、麻生恭弥は毎日仕事帰りに新鮮な野菜や果物をたくさん買ってくる。

時には家で必要な小物や、ラッキーへのおやつやおもちゃも買ってくる。

松井詩は一人で料理をするが、食べきれないので、麻生恭弥が残りを全部食べてくれる。

彼はほとんどの場合、夜になると帰るが、無理に泊まることはしない。

ただ、外が嵐の時には、自らマスターベッドルームに行き、ラッキーと一緒に寝る。

二人の関係が少し変わったと感じたのは、ある晩突然の嵐がきた時だった。

強風が窓を揺らして音を立てた。

新しい建物にもかかわらず、エレベーターが故障し、停電してしまった。

部屋は真っ暗闇に包まれた。

松井詩は雷が怖い。

彼女は布団に身を埋めていたが、ラッキーのことが心配でならなかった。

そんな時、彼がドアをノックした。

「松井詩、入ってもいいか?」

松井詩は怖くて歯がガタガタ震え、喉も詰まって声が出なかった。

麻生恭弥は彼女を安心させるように言った。「何もしないよ。ただ君が心配なんだ」

「......」

「ラッキーも君を心配してずっとクンクン鳴いてる」

彼女は確かにラッキーの心細そうな声を聞いていた。結局、勇気を出して暗闇の中でドアを開けた。

麻生恭弥は一方でラッキーを抱え、もう一方の手で携帯電話のライトを持ち、彼女の恐怖で青ざめた顔を見て、表情が和らいだ。

彼はラッキーと彼女を一緒に小さなシングルベッドに連れて行き、布団でしっかりと包んで言った。「怖がらないで、僕が守るから」

その夜の嵐がいつ止んだのか、松井詩はもう覚えていない。

彼女が目を覚ました時、ラッキーは彼女の腕の中に、彼女は麻生恭弥の腕の中にいた。

彼女の腕には柔らかい犬、後ろには暖かくてしっかりした胸。

まるでサンドイッチのベーコンのように、前後から包み込まれている感じだった。

しかし、彼女はその息が詰まるような暖かさが好きだと認めざるを得なかった。

彼女は必要とされ、肯定され、無条件に偏愛されることを渇望していた。

これらは以前、片瀬響人が与えられなかったものだ。

再び片瀬響人に会ったのは、民事局の前だった。

麻生恭弥が車で彼女を送ってきた。

松井詩は片瀬響人と中田葵が一緒に現れた時、自分がもう怒り狂うよう
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