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第24話

「…譲渡したのですか?」職員は少し驚いた様子で言った。

松井詩は頭を振った。「いいえ、生まれていません」

職員は少し呆れた。「あなたたちに子供がいるか確認したのは、子供の監護権について合意があるかを確認するためです」

「申し訳ありません、私は以前に離婚したことがないので、誤解しました」松井詩は言った。「子供はいません」

職員は頷いた。「では、何も問題ありません。あなたたち二人が同意するなら、この用紙の下にサインをしてください」

松井詩は用紙を受け取り、サインをした後、ペンと用紙を片瀬響人の前に推した。「あなたの番です」

片瀬響人は手を垂らし、動かなかった。

「男の方は何か気がかりなことがありますか?」職員が尋ねた。

片瀬響人は目を閉じ、松井詩の手を引いて外へ歩き出した。

松井詩は驚いて言った。「片瀬響人、何をするの?」

片瀬響人は一歩も止まらなかった。

中田葵は追いかけようとしたが、麻生恭弥に止められた。

「私の姉が連れて行かれたのに、あなたはそんなに安心しているの?」中田葵は驚いて言った。

「彼女に自分で選ばせたい。もし彼女がまだ片瀬響人を忘れられないのなら、私も何も言えない」麻生恭弥は言った。

......

片瀬響人は松井詩を引きずり、民事局の扉を通り抜けた。

松井詩は彼の手を振りほどいた。「あなたは一体何をしたいの!」

「離婚しない」片瀬響人は言った。「離れたくない」

松井詩は身体をまっすぐにし、深く息を吸った。「あなたがずっと離婚したいと言っていたのに」

「俺は今後悔しているんだ、いいか?」

「今まで何をしていたの?今さら後悔するなんて!?」松井詩は彼を怒鳴った。「私は何度もチャンスをあげたことをあなたは分かっている。今、私が麻生恭弥と一緒にいるのを見てから後悔しているの?本当に後悔しているのか、それとも私が幸せになるのが許せないの?」

片瀬響人は驚いた顔で彼女を見た。

「詩ちゃん、あなたは以前はこんなじゃなかった。」

「そう、私は今やただのふしだらな女で、暴力的な女になった。片瀬響人、これはあなたが私をこういうふうに変えたんだ」

「......」

「さあ、帰って手続きを済ませましょう」

片瀬響人は一気に彼女を引き寄せ、自分の胸に抱きしめた。「詩ちゃん、詩ちゃん、私は間違った、謝る。離婚しないで、一緒にうま
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