会社を辞めてから始まる社長との恋 のすべてのチャプター: チャプター 231 - チャプター 240

333 チャプター

第231話 私はお姉ちゃんの付き合いをしている!

 「入江さん、あたな……」医者は重々しくため息をついた。「森川さんは松沢のことをとても心配していますから、あなたにあんな風に言われたら、誰だって悲しくなってしまいます」入江紀美子は相変わらず心配な顔をしているのを見て、医者はまた口を開いた。「松沢さんの病状は実に変わっています、どの外科医でもこんな手術を簡単にできるのに、通常ならこんな状況になるはずがありません。」紀美子は深く息を吸って、「ではもしそれが心理的な要素によるものだったら?」と尋ねた。医者は眉を寄せ、「その確率は極めて低いです」と答えた。イラついた紀美子は頷き、「分かりました。でも私はやはり保守治療をお願いしたいです」医者は相手が自分の意見を受け入れようとしないので、振り向いてその場を離れた。紀美子は松沢初江の病室に入り、真っ白な顔をしていた初江をみて暫く躊躇った。最後、彼女は塚原悟に電話をすることにした。暫くすると、悟は電話に出た。紀美子は休憩エリアに行って口を開いた。「悟さん、初江さんの手術はあなたが引き受けたの?」「私は執刀医ではなく、助手だった」悟は単刀直入に聞いた。「何かあったのか?」その答えを聞いた紀美子は、取り合えず安心した。「東恒病院の外国人の医者さんは初江さんにもう一度開頭手術を勧めているの」紀美子は言った。「君はどう思う?」と悟は聞き返した。「私は素人だから、あなたの意見が聞きたい」「彼達は君にこう勧めているなら、きっとそれなりの自信がある」悟は言った。「初江さんが早く目が覚めるといいな」紀美子「分かった、アドバイスありがとうね」「いいえ」電話を切って、紀美子は森川晋太郎に言った酷い話を思い出した。悟は執刀医ではないこと、彼はきっと知っていた。ならば彼女が言ったことは、確かに酷かった。暫く躊躇ってから、紀美子は晋太郎のメールアドレスを探し出して、一通のメッセージを編集した。「酷いことを言ってごめん、初江さんのことを心配してくれてありがとう」メッセージを送信してから、紀美子は何かが足りないと思って、また一言を追記した。「特に変な意味ではなく、単純に自分が酷いいことを言ったから、謝りたいだけ」メッセージが届いた頃、晋太郎は車に乗ったばかりだった。2通目のメッセージを読んで、彼
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第232話 今夜はどっちが先にくたばるか

 電話の向こう側にて。田中晴は電話を切ると、杉浦佳世子は一本の酒を彼の前にポンと置いた。明らかに酔っぱらった佳世子は聞いた。「晴、何電話してんのよ?まさか逃げようとか思っていないよね?」晴は無力に佳世子を見て、「まさか、俺はそんなことをする人間か?謝ると言ったからには必ず謝るって」「謝れば済むとでも思ってんの?」彼女はフンと蔑み、「あんたを殺してから謝ってみる?」「君はそれができると思ってるのか?人を殺したら刑務所に入れられるよ」「おや?!佳世ちゃん?」晴の話が終わった途端、1人の爽やかなタイプの男が目の前に来た。その人はせいぜい20代になったばかりのようで、かなり幼い顔をしていた。佳世子は晴の話をそのまま無視して、両目を光らせながら立ち上がって若い男性に話かけた。「あら、あんたもここにいたのね!ちょうどいいタイミング、一緒に飲もう!」佳世子は気前よく自分だけの知り合いを晴との飲み会に誘った。晴の顔は白から黒へと繰返して色が変わっていた。男は晴を見て、大きな声で佳世子に聞いた。「こちらの方は?」佳世子「あっ、ただのおっさんよ、すっごく酒が弱いし練習相手にもならないから、気にしなくていい」晴は思わず口を広げ、何で彼女におっさん呼ばわりされなきゃならないのだ??酒が弱い、だと?彼はただ彼女に気を使っていただけだ!それに、1人の男に声をかけた傍から、もう1人の男を飲みに誘った?彼1人じゃあ物足りないのか?晴はイラついてテーブルに置いていた酒をとり、自分のグラスに一杯を注ぎ、そして佳世子に言った。「佳世子」佳世子は振り向いて、「なに?」と聞いた。「酒を飲むんだろ?」晴は佳世子のグラスに乾杯して、「今日はどっちが先にくたばるのかみてみようじゃないか」藤河別荘にて。別荘に帰って、入江紀美子は子供達を寝かせてから自分の部屋に戻った。時間はまだ夜9時だったので、紀美子は息子に電話をかけた。その頃の森川念江は恐る恐るとリビングのカーペットに座っていた。お父さんは今日どうしたのだろう、急にパズルを買ってきて一緒にやろうと誘ってきた。別にパズルは嫌いではないし、お父さんと一緒に遊ぶのも嫌いじゃない。でもなぜかお父さんが怖い雰囲気をしていて、まるで誰かと喧嘩でもしたようだ。
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第233話 情報は全く探れません

 森川晋太郎の鷹のような鋭い目つきを浴びながら、森川念江は緊張して携帯を握り緊め、「どんな質問?」と聞いた。「例えば佑樹とゆみの話とか」入江紀美子は少し戸惑った、なぜ息子の反応が遅いのか?声も低くて、いつもの嬉しそうな口調で彼女と喋っていなかった。念江は心の中で「ドキン」として、「いいえ、お母さん」紀美子「そっか、ならいいわ。これは私達の秘密、お母さんは念江くんならきっと秘密を守ってくれると信じてるから」その話を聞いた晋太郎は、再び携帯を念江に見せた。携帯画面に書かれた文字を読んで、念江の顔色が急に変わった。彼は震えた声で、「お、お母さん、いつになったらお父さんに祐樹くんとゆみちゃんの身の上を教えるの……」紀美子は眉を寄せた。違う、念江の情緒はおかしい!しかもいつも電話する時より質問が多い。紀美子はすぐに晋太郎を連想した。彼は念江の傍にいる可能性が高い!紀美子は冷静で答えた。「念江くん、たとえ佑樹とゆみがあなたと血縁関係がなくても、彼達はあなたの兄弟に変わりはないわ」母の返事を聞いて、念江はほっとした。幸い、お母さんはおかしいと気づいてくれた!念江「分かっている、お母さん」紀美子「それじゃ、電話を切るね」「うん、おやすみ、お母さん」携帯をしまい、念江は質問をされる準備が出来ていた。しかし不思議なのは、父から何も聞かれなかった。父に黙って母と連絡をとっていたことも怒られなかった。念江はこっそりと晋太郎を覗いたが、父の顔色は前より大分悪くなっていた。3日後。渡辺邸にて。狛村静恵は電話の着信音に起こされた。彼女はイラついて電話に出た。「誰よ、こんな朝っぱらから?!」相手は、「狛村さん、前頼まれた件に進展がありました。」と言った。その声を聞いた静恵はすぐに思い出した。彼女はMKの元同僚に頼んで、技術部で晋太郎が人探しをしていたことについて情報を探ってもらっていた。静恵は眠気を一掃して体を起こして、「どうだった?」と聞いた。「森川社長が探していた女は、どうやら社長と随分と関係が深いらしいです。あとで写真を携帯に送りますけど、約束してくれた報酬ですが……」「ちゃんと払うわよ、けどあなたも,その女は晋太郎さんとはどういう関係なのか、続けて探してもらうわ」
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第234話 彼女は忙しすぎた

 狛村静恵はドアを押し開け、携帯を持ってまだベッドに座っていた渡辺野碩の傍にきた。彼女は指で写真の中の女性を指して、「お爺様はこの女性をご存知ですか?」と尋ねた。野碩は携帯を手に取り、目を細めて写真を細かく確認した。彼は一目を見て考え込んだ。「見覚えがある、だが具体的にどこで見たのかは思い出せん」静恵「晋太郎さんと関係のある人で、彼の書斎の引き出しの中で見たことがあります」「なるほど」野碩はもう暫く写真を見て、そして首を振って答えた。「わしは思い出せん、静恵ちゃん」静恵は焦ってきて、更に野碩に頼んだ。「もう少しちゃんと見てください。もしかして晋太郎さんの親戚か何かかな?」「静恵ちゃんよ、彼は人探しをしているのは分かるが、なぜお前まで焦っているのだ?」野碩はそれ以上見ても分からないと思い、携帯を静恵に返した。静恵「私も彼のことを思っていますから、彼の代わりに焦っています」野碩「あいつのことには、一切かかわってほしくない。わしはもう少し休んでるから、君は出ていい」静恵の眼底に一瞬イラつきが浮かんだ。このクソジジイが、思い出せないなら見おぼえがあるなんて言うな!期待して損した!人は年をとると使い物にならなくなる!やはり自分で探さないと!藤河別荘にて。入江紀美子は子供達を学校に送ろうとしたら、白川友里子に止められた。「行かないで」友里子は乞うような眼差しで紀美子を見て、彼女の手を掴んで放そうとしなかった。紀美子は戸惑った、友里子はこれまでずっと大丈夫だったのに、今日はなぜ行かせてくれないのだろう?彼女は少し離れていたところの秋山先生を見た。秋山先生は近くに来て、「白川さんは最近ただ後ろの庭で散歩していただけだから、恐らく外に出たいと思っているかもしれません。たまには環境を変えて気晴らしをすれば体の回復の役に立つかもしれません」と言った。紀美子は仕方なく、友里子を慰めた。「友里子さん、外に連れていってもいいけど、ちゃんと私のいうことを聞いて、大人しく私の傍にいてくれる?」友里子は「本当にいいの?」と目が光った。入江ゆみは友里子の足を抱え、小さな頭をあげて言った。「おばさん、お母さんが外に連れて行ってくれるって、よかったね!お母さんはね、忙しすぎて滅多に私とお兄ちゃんを外に
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第235話 絶対に見失うな

 「友里子さん、上は人が多くてうるさいから、下に残ってね。秋山先生とボディーガードに周りを散策とかお菓子を買いにつれて行かせてあげるから、いい?」「うん」白川友里子は大人しくまた車に戻った。入江紀美子は秋山先生に、「先生、お願いね、必ず友里子さんを見ておいて、絶対見失ったりしないで」と念を押した。「任せて、入江さん」秋山先生は約束してから、ボディーガードと一緒に友里子を散歩に連れて行った。秋山先生はボディーガードに遠くまで行かせず、会社の近くで車を止めさせた。彼女は友里子を近くのコーヒーショップに連れていき、コーヒーを飲むことにした。友里子は店にあった美味しい物を殆ど一通り注文して、秋山先生に言われたレモン水も忘れずに注文した。もうすぐ11月なので、昼間の気温はそれほど暑くなく、太陽の光を浴びるのに最適だった。秋山先生は友里子を連れて店の外の席に座って紀美子を待っていた。しかし、彼女達から少し離れた所に、ハイヒールを履いた狛村静恵が車を降りた。静恵はボディーガードに待つように指示した時、横目で白い服を着た姿を見かけた。そして彼女が無意識に見てみると、相手が見えた瞬間、彼女はいきなり視線が凍った。あれは……森川晋太郎が探している人じゃない?!静恵は慌てて車に戻り、友里子の動きを見つめた。ボディーガードは疑惑して、「狛村さんは会社に行かないのですか?」と聞いた。静恵は彼を睨んで、「うるさいわ、指示がなければお前は黙って待ってればいい!」と不満に言った。ボディーガードは悔しそうに視線を戻した。静恵は指を噛んで、しっかりと友里子を見張った。そこはMK社の近くだが、晋太郎の部下はよくも自分たちが探している人はすぐ傍にいると気づかなかったのか??友里子の動きに合わせて、静恵は携帯でその画面の写真を撮った。静恵はその写真を晋太郎に送るかどうかで迷っていたうち、紀美子は電話をしながら彼女の車の前を通った。静恵は一瞬動きが止まり、紀美子が微笑んでコーヒーショップの前であの女性と会話するのが見えた。なぜ紀美子が晋太郎が探している人を知っているのか??晋太郎は彼女を探している、通常なら紀美子はそれを知っているはずだ。しかし明らかに晋太郎は自分が探している人は紀美子の傍にいるのを知らなかった
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第236話 俺に会いたくなった?

 入江紀美子は少し困ったが、やはり息子に合わないと気づいた。入江佑樹は男の子で、しかも並みの子供より賢い。彼にとってこのような読み聞かせは面白くなかったのだろう。紀美子は入江ゆみの顔を撫でて言った。「ゆみちゃん、今日はここまでにしよう。今度は違うのを読んであげるから。時間ももう遅くなったし、明日まだ学校があるから、寝ようね」ゆみ「うん、分かった。お母さん、お休み。夜更かししちゃだめだよ」「うん、おやすみ」紀美子は電気を消し、子供達の寝室を出て部屋に戻った。白川友里子はもう自分1人で寝れるので、ここ数日紀美子と一緒に寝なかった。紀美子はベッドで横になり、横に置いていた携帯でニュースを見ようとした。携帯を立ち上げたら、森川晋太郎からのメッセージが目に映り込んだ。紀美子は少し戸惑い、彼はなぜ自分にメッセージを送ったのだろう。メッセージを開くと、露間朔也がセクシーな女の子を抱えている写真だった。紀美子は晋太郎に、これのどこが問題なのだろうか?それに、その写真を送ってきて何が言いたいかを聞いた。彼は朔也の私生活まで横から指摘するつもり?紀美子は晋太郎に返信した。「森川社長、ちょっとくだらないとは思いませんか?」返信のメッセージを読んだ晋太郎は、顔色が酷く変わった。彼は朔也の品行を彼女に注意しているのに、なぜ「くだらない」と言われたのか?晋太郎は怒りを帯びて携帯の画面をタップして返信した。「お前は男を探す時は気をつけるべきだと思わないのか?でないと体も金も騙し取られるぞ!」紀美子はあざ笑い、「私がどんな男と付き合おうが、あなたと関係ないでしょう?それに、あなたは人を見る目はあるの?確か前までは狛村静恵のような女とイチャイチャしてたよね?」晋太郎はメッセージを読んで、顔が真っ黒になり、「だが私は状況を把握してから正確な判断ができる!その写真を見せたのは、露間が言っていた母親の結婚式はただの口実に過ぎなかったことが言いたいだけだ!本当に結婚する人は、彼なのかもしれん!」朔也がセクシーガールと結婚する?それは有り得ない。朔也は結婚しない主義だ。朔也の母親が結婚することまで知っているとは、晋太郎はどれだけ暇なのだろうか。紀美子「結婚するのは彼であったとしても、何なの?私と彼との関係
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第237話 それは貴重です

 「あなたは自ら住み込んできたし、それに、会社は私一人だけのものじゃないわ」入江紀美子は笑いながら冗談交じりに言った。「なんて薄情な女なんだ!」露間朔也は言った。「そう言えば、最近会社はどうだ?」「うまく行ってるよ、あなたがいなくてもちゃんと回れてるし」紀美子は続けて冗談を言った。朔也「分かった分かったよ、改めて俺が君の中での位置の低さを言う必要はない!あのクズ男は最近君の所に訪ねてきてない?」「来たわよ!」紀美子は隠さずに言った。「つい8時頃にあなたが美人を抱えてる写真を送ってきたよ」「なんだと?!」朔也は吃驚した。「とうとうY国まで手を伸ばしてきたのか?!なら俺がこの前俺が君と付き合っていると見せかけたことは無駄だったのか?!」紀美子「???」それを聞いた紀美子は、この前朔也が晋太郎に言ったおかしな話を思い出した。「今度は何かをやろうとする前に私と相談してね、暴かれたらみんなが気まずくなるじゃない」紀美子は呆れて言った。朔也は笑顔で返事した。「ボスのご命令とあらば」紀美子は再び朔也に笑わせられた、「もういい、そろそろ寝るよ、あなたはそちらのことに専念しといて」翌日。紀美子は朝っぱらから塚原悟からの電話を受けた。「起きた?」悟は笑いながら聞いた。紀美子は目を揉みながら、辛うじて目を開けて時間を見た。まだ朝6時だった!何で悟はこんなに早い時間に電話をしてきた?紀美子「あなたの電話に起こされたけど、どうかしたの?」悟「差し支えなければ、ドアを開けてもらっていい?」紀美子は慌てて布団を開いて窓際に行った。カーテンを開くと、悟がきれいなバラの花束を持って下にいた。その花束は彼が着ていた薄色のコートととても似合っていた。「今降りてくるから」紀美子は急いで部屋を出た。下に降りてドアを開けて、紀美子は悟が持っていた花束をみて彼に聞いた。「花をくれるなんて、今日は何か特別な日かな?」悟は彼女を見つめ、冗談交じりに、「自分の誕生日を忘れるほど、相当忙しかったんだろうな」と言った。そう言って、彼は花束を紀美子に渡した。紀美子は今日は自分の誕生日だったのをすっかりと忘れていた。 口を開こうとしたら、彼女はふと花束の中にピンクダイアモンドのネックレスが入っていたのに気づいた。「ロベ
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第238話 出張のついでに

 入江紀美子はどうやってそのネックレスを断るかを考えていて、塚原悟が入ってきたのに全く気付かなかった。その時の悟の挙動は、紀美子を吃驚させた。「私に朝ごはんを作らせるんじゃなかったの?」二人は近すぎて、紀美子は気まずくて顔が真っ赤になった。「冗談だよ、今日は俺の誕生日じゃないし」悟は軽く笑った。紀美子は、「誕生日の祝いはあまりしたくないけど、佳世子を家に呼んできて一緒にご飯を食べるってのはどう?そうすればみんなでワイワイできるし」と無力に勧めた。「うん、今日は君の誕生日だから、君が決めて。俺は手伝うから」「分かったわ」紀美子が言い終わった途端、悟に両手で肩を捻じられ、身体を反転させられた。「では、外で朝ごはんの出来上がりを待ってて」紀美子は苦笑いながら無理やりに台所から押し出されたが、1階にいてもすることがないので、2階に上がって子供たちを呼び起こしに行った。子供たちを連れて顔を洗って降りてきた頃、悟は既に朝ごはんの準備ができていた。入江ゆみは悟を見て、嬉しそうに走っていった。「悟パパ!会いたかったよ、最近は何処に遊びに行ってたの?」と聞いた。悟はゆみを抱き上げ、愛情を込めて彼女の小さな鼻を指で撫で、「前回会ってからまだそんなに経っていないよ、もう会いたくなった?」ゆみは小さな手で悟の首を抱えて顔で擦りながら、「うん、とても悟パパに会いたかった」と答えた。入江祐樹は台所の階段に寄り添って、「悟パパのことを念じていたのを見ていないけど?」と言った。ゆみはすっと小さな体をまっすぐにして、兄を睨みながら文句を言った。「お兄ちゃんはうるさい!黙ってて!」祐樹は口元に優雅な微笑みを浮かべ、眉を動かしながら、「じゃあ、お兄ちゃんの質問に答えて、ゆみはお母さんを愛してるの?」「なんて幼稚的な質問なの?」ゆみは小さな唇をすぼめてフンと鼻を鳴らした。祐樹「ゆみ?なるほど、じゃあ、お母さんへの誕生日プレゼントを用意したの?」「あっ……」ゆみは固まった。「今日はお母さんの誕生日だったの?!」「そうだけど?」祐樹は妹をからかった。「で、プレゼントは?」ゆみは申し訳なそうに目を瞬いて紀美子の方を見て、小さな人差し指をつつき合いながら、「お母さん、ごめん、ゆみは忘れちゃったの……」と謝った。「いいのよ」
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第239話 いくら出せばいい?

 塚原悟の説明を聞いて、入江紀美子は漸く安心した。彼女は頷いて、「それならいい、でないとあなたの誕生日になったら、何を送ればいいか迷っちゃうわ」と言った。「まだそんなよそよそしいことを言うんだ」悟の眼底に一抹の無力さが浮かんだ。紀美子は慌てて説明した。「違う、あなたのプレゼントが高すぎたのよ」「はいはい、冗談だよ。俺は後で病院に行かなければならないから、夜また来る」「分かったわ」昼頃。紀美子は手元の仕事を片付けたら、杉浦佳世子が電話をかけてきた。「紀美子!お誕生日おめでとう!」電話の向こうから佳世子のはしゃいだ声が聞こえてきた。紀美子は笑って返事した。「ありがとう!」佳世子「いいって!夜は何も準備しなくていいから、私はレストランで個室を予約して誕生日を祝ってあげる」紀美子「ただの誕生日だから、そんなに大袈裟にしなくても」「ダメダメ!」佳世子「これはあなたが帰国してから初めての誕生日だから、大々的に祝わなきゃ!」紀美子「……」状況が分からない人ならてっきり還暦の祝いだと思われるだろう。「じゃあこうしよう、あなたの誕生日を借りて豪華に奢ってもらう」そこまで言われた紀美子は、遠慮せずに受け止めた。佳世子「じゃあ、また夜ね!後でレストランの住所を送るから」電話を切った後。佳世子は少し考えてから田中晴にメッセージを送った。「坊ちゃま、今どこ?」MK社で森川晋太郎を待って一緒にご飯を食べようとした晴は、「MK社だよ、何かご指示でも?」佳世子「ちょうどいい!後でデパートに連れてって」晴「要件を言えよ!何をする?」「今日は紀美子の誕生日、私はプレゼントとケーキを買いに行きたいけど、脚がないの!あなたはこの間、いつでも呼んでって言ってたじゃない?」佳世子は少しイラついてきた。このダメ男、女より質問がしつこい!メッセージを読んだ晴は戸惑った。今日は紀美子の誕生日だった?晋太郎はこのことを知っているだろうな?晴は晋太郎を試すことにした。彼は携帯を置き、のんびりそうにお茶を一口飲んで口を開いた。「晋太郎さん、今日は何か用事ないのか?」晋太郎は晴を一目睨んで、「言いたいことがあるならはっきり言え」と言った。彼は覚えていない!晴は口元の笑みを押さえた。晴「そうか、今日
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第240話 違うと思います

 その会話のせいで、森川晋太郎は田中晴にデパートに連れられ、そして何も知らなかった杉浦佳世子も一緒に行った。晴の理由は極めて簡単、「女は一番女のことが分かる!」それは晋太郎が断れない理由だった。佳世子は辛うじてボディガードたちの視線の中で歩いていて、道中はずっと晴を見つめていた。そして、彼女は一番前に歩いていたすらっとしたスタイリッシュなボスを見て、声を低めて歯ぎしりしながら聞いた。「何でボスを呼んできたのよ!!」後ろの話を聞いて、晋太郎は止って振り向いて見た。佳世子は一瞬で満面の笑みに変わり、「社長、どうかなさいましたか?」と伺った。晴「……」顔を変えるのがうまいな!晋太郎は唇を閉じ、何も言わずに視線を戻して周りを見渡った。佳世子は隙を見て思い切り晴の尻を手で摘まんだ。晴は痛みで思わず大きく口を開いて、「なにすんだよ?!」と悲鳴をあげた。佳世子「教えて、何で社長を呼んできたの!紀美子は社長と息が合わないのを知ってるでしょ?」晴「彼は自ら来ようとしたから、俺は友達として断る理由がなかった」佳世子は困った顔で、「じゃあボスは夜の紀美子の誕生日祝いに来るの?」と聞いた。「連れて行かないわけがないだろう?」晴は眉を立てて聞き返した。佳世子「もう知らないんだから!!」二人が会話していた間、晋太郎はアクセサリー屋の前で止った。「彼女はこれが好きか?」晋太郎は佳世子に聞いた。「ダメだと思います」佳世子は首を振って答えた。そしてすぐ、晋太郎はまたぜいたく品のかばん屋の前で止り、「これならどう?」と尋ねた。「それも違うと思います」そして、晋太郎はブランド品の時計屋の前で止まり、「これ??」と尋ねた。「それもです!」佳世子はまた首を振った。晋太郎の顔が曇ってきて、冷たい声で聞いた。「ならば彼女は何が好きなんだ??」晴は二人の会話を聞いて慌てて口を開いた。「紀美子は腕時計をつけてるだろう?晋太郎さん、店に入ってみたらどう?」二人の男が時計屋に入ったのを見て、佳世子は一言だけ言いたかった。社長が送るもの、紀美ちゃんはどれも気に入らないよ!聞いても無駄でしょう??しかし言い換えれば、彼女は社長がデパートに入るのは初めて見た。もし二人が仲良しだったら、紀美子はきっと感動し
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