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第0276話

綿が数歩進んだところで、司礼にばったり会った。

「あら、司礼!」綿は嬉しそうに手を振った。

「綿ちゃんも来てたのか?」司礼は驚いた様子で答えた。

「うん、森川玲奈に誘われて来たの。あなたは?」綿が尋ねると、

「え?森川玲奈と知り合いなのか?」と、司礼は目を丸くした。

「当たり前よ。玲奈は私の親友で、あの子がスターになるまでの道のりをずっと見守ってきたの」綿は誇らしげに笑った。

司礼は少し微笑んで、「実は、君にお願いがあるんだ」と切り出した。

お願い?綿は目を細めた。

「うちの宝石店のイメージキャラクターの契約が切れて、新しいキャラクターを探してるんだ。森川玲奈はピッタリなんだけど、忙しくてなかなか時間が取れなくてさ。君から彼女に話をつけてもらえないかな?」

「そんなの簡単よ。玲奈が少し落ち着いたら、食事でもしながら話してみて。ただ、契約するかどうかは彼女次第だけどね」綿は微笑んで答えた。

司礼は手を合わせて、「会えるだけでも十分だよ。ありがとう!」と感謝の意を示した。

二人は和やかに談笑していた。

その様子を少し離れたところから輝明がじっと見つめていた。ポケットに入れた手が徐々に握り締められていった。

周囲の人々は息をひそめていた。

本当に離婚したのだろうか?

夫婦が顔を合わせて軽く挨拶するだけなんて、普通じゃない。

綿と司礼の方が、よほど夫婦らしいのだ。

「高杉さん、そろそろ中に入りましょうか?」隣にいた女性が恐る恐る声をかけた。

輝明の表情は固く、目をそらし、喉を動かしながら「うん」と短く答えた。

会場に入ると、すぐに輝明は多くの女優や社長令嬢たちの注目を集めた。

彼がこういったイベントに顔を出すことはめったにないから、普段彼を目にする機会なんてほとんどなかった。

輝明が現れると、たちまち場内はざわめき始めた。輝明のその容姿は、業界の多くの芸能人たちを圧倒するほどだった。

芸能人たちも彼の存在に気づくと、自然と一歩引いてしまうのだ。

さらに、輝明の業界での地位と権力が、彼を多くの女優たちの憧れの的にしていた。

今、彼が離婚したとなれば、ますます女性たちが彼に惹かれるだろう。

誰がこの輝明を手に入れることができるのだろうか?

綿は司礼と一緒に会場に入った。今日の彼女は控えめな服装をしており、多くの人々が玲奈や輝明
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