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第0277話

綿は微笑み、手に持っていたスイカを軽く持ち上げて、輝明に挨拶した。

輝明は心の中で小さく舌打ちし、そのまま他の人たちとの会話を続けた。

綿がスイカの皮をテーブルに置いて指先を拭いていると、誰かが近づいてくるのを感じた。顔を上げると、それが嬌の兄、易だった。

「芸能界のパーティーって言ってたけど、まるで南城のビジネス界の名士が集まる会みたいだわ」綿は心の中でそう思った。

易は綿を一瞥し、隣のグラスを手に取ってお茶を一口飲んだ。

綿は挨拶するべきかどうか迷っていたが、彼が先に口を開いた。「聞いたところによると、桜井さんと高杉輝明は離婚したそうだね?」

綿は彼を見た。易は口元に微笑を浮かべ、黒いスーツがとても洗練されて見えた。片手をポケットに入れ、もう片方でグラスを握っていた。

易は落ち着いた大人の魅力を持っていたが、この言葉を口にした時、隠しきれない喜びが垣間見えた。

綿は小さくため息をついた。彼が喜んでいるのは、妹の嬌のためだろう。

三年待った末に、嬌はついに夢に見た輝明の妻になることができる、陸川家全体が彼女のために喜んでいるに違いなかった。

「ええ、離婚した」綿はあっさりと答えた。

「そうなることは初めからわかっていたらな」彼の声は冷静だったが、そこには隠しきれない皮肉さが込められていた。

綿は軽く笑い、遠くにいる玲奈の方に目をやった。「やってみなきゃわからないこともあるじゃない」

「無駄なことをしたな」易は冷ややかに鼻を鳴らした。

綿はその皮肉には全く動じなかった。

実際、彼女は易を怒らせたこともなければ、親しく話したこともなかった。ただ、陸川家の人々は皆、嬌を中心にして、彼女を傷つける者はすべて敵と見なしていた。

誰かが易を呼ぶと、彼は軽く手を振ってその場を離れた。

綿は心の中で小さく白目をむいた。

彼が自分の兄でなくて本当によかった。もしそうだったら、毎日喧嘩ばかりしていただろう。何も知らないで人を見下すなんて、本当に愚かな男だ。

「おっと! 妹が来たぞ!」

突然、誰かが声を上げ、みんなの視線が入り口の方に向けられた。

そこには、黒いタイトなバックレスドレスを着た若くてセクシーな女性が現れた。

彼女の後ろには二人のボディガードが付き従い、隣にはマネージャーがいた。その姿はまさに大スターそのものだった。

「やっぱり
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