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第0279話

綿が玲奈と会話を交わしていたところに、秋年が近づいてきた。

「お二人で話すのもいいけど、俺も混ぜてもらえないかな?」秋年は少し悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。

綿は腕を組み、美和の方を顎で指し示しながら言った。「白川美和と話しているの、楽しそうじゃない?」

白川美和?

秋年は美和の方を一瞥し、ため息をついた。「いや、彼女のことは知らないよ」

「この業界で知っているのは、あの子だけだ」秋年は突然、玲奈を指さした。

その言葉に玲奈は驚いて、食べていたものを噎せそうになった。

「岩段社長に覚えてもらえて光栄です」玲奈は微笑んで丁寧に言った。

秋年は舌打ちし、バーに寄りかかって玲奈を興味津々に見つめた。「その笑顔、嘘くさいな」

「もっと嘘くさい笑顔が見たい?」玲奈は鋭い目つきで秋年を見返しながら答えた。その口調には明らかに不機嫌さが感じられた。

秋年は、人の態度から敵意か尊敬かを見抜くことに慣れていた。玲奈の敵意を感じ取るのには時間はかからなかった。

秋年は不思議そうに眉をひそめ、前に身を乗り出して玲奈に尋ねた。「森川さん、俺が何か悪いことをした?」

綿はケーキを食べながら、目の前のやり取りを黙って見ていた。その光景が妙に面白く感じられた。

少し視線をずらすと、輝明が多くの女性たちに囲まれているのが見えた。

さすがだ。

こんな輝明を手に入れても、嬌は安心できないだろう。

嬌は綿とは違って、輝明がこれだけの女性たちに囲まれているのを見ても、何事もなかったかのように振る舞うことはできないのだ。

嬌の独占欲は非常に強いからだ。

もし嬌がここにいたら、どれほど面白いことになるか…。

綿がそんなことを考えていると、ちょうど入口から新たな人物が入ってきたのが目に入った。

「岩段社長、あなたが悪いわけじゃない。ただ、あなたが嫌いなだけ」玲奈はっきり言うタイプだから、まっすぐに言い放った。

秋年もそういうタイプだった。

「じゃあ、もっと理解できないな。俺たちは接点もないのに、どうして嫌われるんだ?」秋年は腕を組み、不思議そうに首をかしげた。

やっぱり、女って理不尽だ。嫌いな理由なんて、ないのかもしれない。

「入り口に誰かが来たよ」綿が二人の会話を遮った。

玲奈と秋年は一緒にそちらを見た。

その時、易がその人物を迎えに行った。

「彼女、病
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