第98話

美咲はカフェでためらいながら座っていた。彼女の前には、アメリカンブルーマウンテンコーヒーが置かれていた。対面の上田は優雅にカプチーノを飲んでいた。

二人は二十分近く沈黙していたが、その間、上田はただ静かにコーヒーを飲み続けていた。美咲は、彼女から何か言われたと思って身構えていたが、予想外の静けさに緊張感が高まったばかりだった。

このままではいけなかったと思い、美咲は目の前のコーヒーを一口飲んでみた。

すると、その味が非常に苦かった…

「もうすでにかなりひどいとは思ってたけど、じっくり見るとその差は本当に想像以上だね」

美咲はその言葉にショックを受けた。

上田はコーヒーを置き、冷たい視線で美咲を見た。

「颯真にふさわしい品格が全くないし、服装のセンスもめちゃくちゃ。無名のブランドばかりだ。

「気品も足りないし、颯真はどうしてこんな人を選んだのかしら？」

上田は再度美咲をじっくりと観察し、この娘には自分が指摘したような魅力がなかったことを確信した。

この娘は優秀な品格を持っていなかったし、むしろ無邪気で愚かだった。

美咲は彼女の言葉に反論できず、言葉を失った。それらは全て事実だった。

橋本は裕福な家庭で、娘の教育には非常に熱心だったが、彼女はその例外だった。

でも、自分は橋本の実の娘ではなかったからだった。

美咲と橋本月影は同じ家庭で育ちながら、まったく異なった教育を受けていた。

橋本月影は貴族のような上品な振る舞いを学び、優雅な生活を送ったことを期待されていた。

一方、美咲は金融や文学、絵画の教育を受け、実務的な役割を担っていた。

橋本家の期待は、月影を華やかに育てた。

一方で、美咲には労働力としての役割を与えるものだった。

この状況により、美咲は大学卒業後、自分の力で新しい道を切り開こうと、独自に漫画会社を設立した。

話がちょっと外れた。

美咲は、橋本月影の学んだことを全く学んだことがなかった。

「どうやったら颯真を離れることができるのか、言ってちょうだい」

上田はとうとう自分の望みを口にした。

美咲はどんな反応をすればよかったのかわからなかった。

美咲はこういう状況が実際に起こったとは思わなかった。まるで以前、氷川と一緒に見た恋愛映画のようだった。

古臭くて定番で、脚本家の考えたままの展開だった。

しかしそれが