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第100話

上田は自分の考えをそのまま口にした。バッグから何枚もの写真を取り出した。

「これが颯真のために選んだ女性たちよ。彼女たちはあなたより美人で、従順で、能力も高く、家柄も良い。なのに、どうして颯真があなたに心を奪われたのか、私には分からない

「颯真の周りの人に聞いてみたけれど、彼が街であなたを見かけた途端に結婚を決めたとしか言わないのよ。それが本当に信じられない。颯真はそんなに軽はずみな人ではないはずなのに、なぜ急にあなたと結婚したのか…」

美咲はその先の言葉をもう聞き流していた。渡された写真を一枚ずつ見ていくと、そこに写る女性たちは皆、自分よりも完璧で優れていた。まるで自分が無価値に思ってしまった。

そう、私はどうして氷川と結婚できたのだろうか?「たぶん、颯真は私のことを好きかもしれない」

美咲がつぶやいた。

「何?」それを聞いた上田は、驚きとともに笑い飛ばした。

「颯真があなたを好きだなんて、まさか!

「颯真は利益を重視した子で、いつも理性的だ。だから氷川グループを世界トップに押し上げた。彼があなたに夢中になるなんて考えるのは、あまりに滑稽だ!あなたのどこに颯真を魅了したところがない」

上田は確かにそう思っていた。

颯真が恋をしていたと聞いたとき、実際、彼女は喜んでいた。

息子がついに恋人をできた、その女は彼にとって有益な存在であったことを期待していた。

しかし、彼女のプロフィールを詳しく見ると…

颯真はどうしてこういう女性を選んで結婚したのかしら?もっとよかった選択があったはずなのに。

子供が過ちを犯した時、母親がそれを正すべきだった。

それが上田が信じた真理だった。

上田は冷ややかな微笑を浮かべながら美咲に視線を向けた。

「ここまで言えば、あなたも私の意図をお分かりいただけるでしょう?

「お嬢様、よく考えて」

上田は荷物をまとめて立ち上がり、会計を済ませてカフェを出ようとしたが、途中で彼女はまた足を止めて振り返り、美咲の目をまっすぐ見て言った。

「もしあなたが颯真と結婚したのがあなたの家族やその婚約者のためなら、心配しないで。あなたが颯真と離婚すれば、私がきれいに片付けるから」

そう言って、彼女は振り返ることなくカフェを出て行った。

美咲はそこで長い間座っていた。その後、ウェイターが少し心配そうに近づいた。「お客様、コ
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