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第106話

須山は分析を始めた時、まだ少しぎこちなかったが、次第に話がまとまり、言葉も滑らかになっていった。

彼は、心の中に抱えていた思いを美咲に伝えたが、直接ではなく、巧みに彼女が自分の良さに気づくように仕向けたのだった。

須山の言葉に耳を傾けながら、美咲は徐々に自信を持ち始めた。しかし、すぐにまた不安が襲ってきた。「でも、彼のお母さんは私のことをあまり好いていないの。彼の家はすごく裕福で、権力もある」

須山は眉を上げて驚いた。「どれほどの権力があるの?美咲の家もかなりの名門で、会社も持っているだろう?」

美咲は首を振って嘆息した。「レベルが全然違った」

何?

彼女の言葉に、須山は驚きを隠せなかったが、それを言葉にはしなかった。

「夫の会社は世界のトップ十の会社だ」と美咲は少し控えめに言った。

その言葉だけでも須山を驚愕させたのに十分だった。「美咲は本当に俺の心にふさわしい人だね。

「こんなに素晴らしい夫を選ぶ眼を持っているなんて」と、須山は心の中で呟いた。

「すごいわね、美咲は、少しプレッシャーを感じているんじゃない?」

「そうね」美咲は憂鬱そうに顎を支え、目の前の食事にも手をつけず、箸でぼんやりとおかずをつついていた。

須山は彼女の様子を見て、少し心配になった。「その人、美咲に優しくしてくれるの?」

須山は思わず聞いてしまった。

氷川のことを思い浮かべると、美咲の顔には自然と微笑みが浮かんだ。「いつも私を守ってくれる。彼の母親は私たちの関係を反対しているけれど、彼はいつも私を支持する」

「それは良かったじゃないか」

須山はまっすぐ言った。

それでも美咲は真剣な表情で言った。「でも、彼の母親の言うことも正しい」

須山は彼女の悩みを理解した。「美咲は自分が彼に釣り合わないと感じているんだね。家柄が違うことに悩んでいるか」

「はい、そうだ!」と美咲は速く頷いた。

「私はいつもまでも彼に守られていたくない、私も優秀になりたい」

須山はあきらめの息をついた。やっとわかった。あの二人の絆は本当に深く、どうやっても割り込んだことはできなかった。

だから、早く気持ちを整理して、遠くから彼女を見守ろう、必要ならアドバイスをしたぐらいが十分だった。

「そういえば、美咲は会社を立ち上げたね。旦那さんのサポートも受けてるんだろ?」

「ええ、そうだけ
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