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第107話

美咲は驚きで口をぽかんと開けたまま、須山をじっと見つめていた。「須山さん、どうしてそんなに私を信じられるの?

「私、自分自身にすら自信がないのに」

須山は少し照れくさそうに微笑んで答えた。「それはね、美咲が一年生の時に僕たちのイベントを見事に仕切ってくれたから、美咲の力を信じてるんだ」

美咲の心には温かいものが流れ込み、その信頼が彼女に大きな勇気を与えた。

「ありがとう、その信頼に応えるために、全力を尽く」彼女はそう言い、決意を新たにした。

しかし、須山は首を振りながら言った。「違うよ、美咲。

「君が頑張るのは、君自身が大切に思う人のためだよ」

彼女の様子を見ると、彼はどうしようもない苦い感情に包まれてしまった。

美咲はその言葉の意味を少しずつ理解し始め、

「そうだね!」と微笑んだ。

彼女の顔から不安の影が消え、「ありがとう、須山さんのおかげで気持ちが晴れたよ。夫に追いつくために努力して、彼と肩を並べて歩ける女性になるために頑張る」と心から答えた。

須山は微笑みを崩さず、まるで仮面のように固定された表情をしていた。

「うん…」

美咲はエネルギーに満ち溢れ、今すぐ会社に戻って仕事をしたくなった。

「じゃあ、私は帰るね。今は時間を無駄にできないから」

須山は少しがっかりしたような目をしていた。「分かった、気をつけて帰ってね。傘を忘れずに、もう濡れないように」

美咲はうなずき、背を向けた。

しかし、須山の心はすごく痛んでいた。

そして、美咲はふっと振り返った。「あ、須山さん、ラインを教えてもらえる?手ぬぐいが洗い終わったらまた会いに来る」

須山の気分は晴れ、二人はラインを交換した。

その後、須山は美咲を校門まで送り、彼女に手を振って見送り、背を向けて去って行った。

もっと美咲と一緒にいたくないわけではなかった。ただ、彼女が夫のために努力した姿を見たのが辛かった。

その姿が自分のためでなかったことを考えると、嫉妬で狂いそうになった。

美咲の生活に介入しないようにするために、少し距離を置かなければならなかった。

門のそばにいた警備員さんが、微笑みを浮かべながら言った。

「彼氏かい?」

美咲は恥ずかしそうに顔を赤らめ、「違う、ただのクラスメートだ」と答えた。

「クラスメートねえ?」

警備員さんは意味ありげに微笑んだ。

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