共有

第35話

氷川颯真は橋本美咲を連れて上階に行った。ドアを開けた途端、目の前の光景を見た橋本美咲は、息をのんだ。

部屋のあちこちに置いていたバラを見て、複雑な顔をした。振り返って氷川颯真を見た。「普段もこんな部屋に住んでるの?」

氷川颯真も呆気に取られた。

彼の部屋はいつも黒くてミニマルで、このように派手ではなかった。

橋本美咲の質問を聞いた後、彼は呆けた顔で橋本美咲を見て、目をパチパチさせながら言った。「いや、違うよ。普段では黒くてミニマルな内装だったが、今日はどうしてこうなったのか分からないわ」

そうして、橋本美咲と氷川颯真はその場で立ち尽くし、お互いを見つめ合った。

すると、橋本美咲は氷川颯真の顔の美しさに耐えられず、先に視線をそらした。

氷川颯真もほっとした。自分の可愛い妻は、やっと視線をそらした。そうでなければ、自分も耐えれらなった。

氷川颯真は慌てて説明した。「美咲ちゃん、信じて。この部屋はいつもこんな様子じゃないんだ。前に僕の部屋を見たことがあるよね。黒くてミニマルだったわ」

橋本美咲の耳はまだ赤くて、あまり深く考えずに氷川颯真に頷いた。

「信じてるよ」

氷川颯真は暖かさを感じた。自分の妻は本当に可愛いだね。

彼は橋本美咲に微笑みかけ、彼女を少しリラックスさせようとした。

「この部屋はプレジデンシャル・スイートで、普段は主寝室だけ使ってるんだ。ここには寝室がもう一つあるので、気に入るかどうかわからないが、もし気に入らなければ、人を呼んで、中の物を変えられるよ」

橋本美咲は首を横に振った。「大丈夫よ。住む場所にはこだわりがないんだから。なぜバラだらけなのか知らないけど、結構気に入ったわ」

氷川颯真は頷いて、頭の中にこう考えた。美咲ちゃんがこんなに花が好きのなら、家で鉢植えをいくつ育てばいい。さらには、温室を建てて、花を世話する専門家も探せばいいんだ。

そうすると、美咲ちゃんが花を世話する手間も省けた。しかも、いつでも美しい花を見ることができたわ。

橋本美咲はまだ自分の旦那が何を考えているのか知らなかった。もし知ったら、きっと驚いただろう。

彼女はただ花が好きと言っただけで、氷川颯真に温室を建ててもらうつもりはなかったから。

しかし、それを知ったのはずっと後のことだった。その時、彼女はとても驚くだろう。なぜなら、氷川颯真はその中に
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status