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第128話

食卓で、氷川颯真は橋本美咲に、愛情たっぷりにエビの殻をむいてあげていた。

そして、橋本美咲は幸せそうにお椀の中のエビを食べていた。自分でエビを剥かなくていいなんて、本当に素晴らしいわ。

美咲のお椀の中のエビがなくなると、氷川颯真はまた、橋本美咲が好きな料理を彼女のお椀に入れてあげた。

一時、橋本美咲は向かいで食事をしていた須山啓太に、気を配る余裕がなかった。

須山啓太は苦々しく氷川颯真を見つめた。自分はさっき何を期待していたのだろう?

この二人の関係はやはりとても良いわ。

須山は心の中の苦しい気持ちを抑え込み、できるだけ平静を装って、お椀の中のものを食べ続けた。

突然、橋本美咲が立ち上がって氷川颯真に言った。「颯真、お手洗いに行ってくるから。須山啓太を少しの間よろしくね?」

氷川颯真はうなずき、橋本美咲に微笑んだ。「安心して、任せて」

橋本美咲が去った後、食卓の雰囲気は一気に冷え込んだ。二人の男は無表情でお互いを見つめ合った。

「それで、須山さん、一体うちの妻に何をするつもりなの?」

既に須山の意図は大体分かっていたが、氷川颯真は念のためにその質問を口にした。

須山啓太は目の前の食べ物を優雅に食べた。飲み込んでから、ハンカチで口を拭いて、ようやく氷川颯真を見上げた。

「氷川さん、もうお気づきだろうが、僕は橋本美咲が好きなんだ」

須山啓太のその一言で、食卓の雰囲気は一気に緊張した。

氷川颯真は目を細め、何か言おうとした。

しかし、須山啓太は氷川颯真にその機会を与えなかった。「もちろん、今はもう諦めた」

氷川颯真は驚いた表情で須山啓太を見つめた。

「でも、もし君が橋本美咲を粗末に扱うなら、僕は彼女を取り戻すために躊躇しないわ」

須山啓太は目の前の氷川颯真に恐れずに言った。たとえ彼が世界一の企業の社長であっても。

須山は橋本美咲を七年間待ち続けた。結果は良くなかったが、彼は待ち続けることをいとわなかった。

「そんな日は来ない」

氷川颯真は即座に否定した。

颯真の顔には柔らかな笑みが浮かんでいた。「美咲は僕一人のものだ。他の人が僕の宝物に手を出そうとするなら、まず僕を乗り越えなければならない」

須山啓太は氷川颯真の脅しを無視し、その場に座り続けた。

幸いにも、その雰囲気は戻ってきた橋本美咲によって破られた。

橋本美咲は少し
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