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第127話

そして、氷川颯真は可笑しそうに橋本美咲を見つめた。その場で美咲の言葉を否定することはせず、あたかもそれを認めたようだった。どうせそのハンカチは颯真が洗ったもので、妻の手を経ていないため、あの男もどうすることもできなかった。

須山啓太は橋本美咲の手から、ハンカチを受け取ると、少し困惑した表情を浮かべた。すでに半分近く縮んでしまったハンカチを見て、気にしない様子で橋本美咲に言った。「大丈夫、ただのハンカチだ」

「でも、それは須山の手作りで、たくさんの手間をかけて作ったものなのに。私の不注意のせいで、こんなふうにしてしまったわ」

橋本美咲はまだ少し不安そうだった。

氷川颯真はその様子を見て眉をひそめ、心の中で少し後悔した。あの時、わざとハンカチを縮ませなければよかったわ。そのせいで、妻が今もこの人に対して、こんなに申し訳なく思っていたなんて。

須山啓太もため息をついた。この件について、もし何か要求しなければ、橋本美咲はきっと心が落ち着かないだろうと理解した。

「じゃあ、橋本美咲、旦那と一緒に、僕に食事をおごってくれないか?」

須山啓太はこの要求を考えなしに、出したのではなかった。

彼は一通り考えた末、すでに橋本美咲と彼女の旦那の間に割り込まないことを決めた以上、全ての面において最善を尽くすべきだと判断した。

現在の状況では、橋本美咲はハンカチを誤って縮ませてしまったことに対して、申し訳なく思っていたから。何かお詫びをしなければ、気が済まなかったはずだ。

それに、橋本美咲の旦那が隣に立っているため、もし自分が不当な要求をしたら、二人の関係に必ず悪影響を及ぼすだろう。

それならいっそ、橋本美咲とその旦那に、食事をおごってもらう方がよかった。

ちょうどこの機会を利用して、氷川颯真が橋本美咲に対して、本当に良くしているのかを、自分の目で確かめることができる。そうでなければ、まだ少し安心できなかった。

須山啓太のこの要求を聞いて、隣の氷川颯真は眉をひそめた。目の前の須山をじっと見つめた。

目の前の須山啓太も氷川颯真の視線に気付き、優しい笑顔を向けた。

氷川颯真は目をそらし、須山啓太の意図を大まかに理解した。

この男がこんなにも、物分かりが良いことに免じて、ハンカチの件はもう気にしないことにした。

逆に、橋本美咲はほっとした。すぐに目の前の須山に向か
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