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第125話

橋本美咲は氷川颯真のこの言葉に打ちのめされ、顔色が青白くなった。

「じゃあ、どうすればいいの?」美咲は少し苦しそうに、氷川颯真に尋ねた。

氷川颯真はそんな橋本美咲を見て、少し気まずくなった。結局のところ、自分がハンカチをこんな風に洗ってしまったのだから。

しかし、美咲も他の男のハンカチを受け取るべきではなかった。

そう思うと、氷川颯真はさらに堂々とした態度を取るようになった。

「こうしよう、奥さん。ハンカチを僕に渡して。僕があの方に会って、ハンカチを返してやる。丁寧に謝れば、きっとあの方も気にしないでしょ」

氷川颯真はいつもと変わらぬ笑顔を浮かべた。

橋本美咲は特に違和感を感じなかった。少し考えて言った。「やっぱりいいわ。だって、私が洗うと約束したのに、結局…」

はあ。橋本美咲はため息をついた。

「しかし、僕が奥さんのハンカチを縮ませてしまったから」

氷川颯真はこのミスを自分のせいにしようと必死だった。

氷川颯真の言葉を聞いて、橋本美咲の心の中の怒りも少し収まった。

幸いにも、氷川颯真は責任を逃れようとせず、自分の過ちを認めた。

そう思うと、橋本美咲は氷川颯真を見る目が、ますます優しくなった。

「颯真、こうしよう。一緒に行こう。だって、ハンカチを縮ませたのは颯真だし。でも、ハンカチを預けたのは私。だから、私にもある程度の責任があるわ」

橋本美咲は氷川颯真にそう言った。

氷川颯真は仕方なく、妻の意向に逆らえず、結局そうするしかなかった。

颯真は頷いた。「わかった。それでは、いつあの方に会いに行こうか」

橋本美咲は少し考えた。

「明日にしよう。ハンカチのことは早く対処した方がいいし。それに、明後日は会社で予定があって、須山啓太と会えないから」

氷川颯真はうなずいた。

どうやらあの方の名前は須山啓太らしい。ならば、一度じっくり会ってやらないと。颯真はそう心に決めた。

ことを片付けた後、氷川颯真と橋本美咲の間には再び平穏が訪れた。

橋本美咲は、大雑把で特に気にしていなかったが、氷川颯真は、これが嵐の前の静けさだと感じた。

翌朝早く、橋本美咲は氷川颯真を連れて、大学のキャンパスにやってきた。

美咲は無意識に警備室を一瞥した。ああ、今日、当直の人は、前のあのおじさんじゃないみたいね。

「美咲ちゃん、その同級生はどこにいるんだい
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