共有

第56話

この美緒という女は、表面上は穏やかで無害に見えるが、実は鋭い一面を隠し持っているようで、一言一句が由紀を追い詰めていた。確かにわざと彼女を困らせようとしたが、彼女にそう言われてしまうと、そうするのも気が引けてしまった。

「ステージは三つです!」奥歯を噛みしめながら、由紀は断固として言った。「特別扱いはしません。プロジェクト部に入る者は皆、三つのステージの合格を経ているんです。だから、水野さんも例外ではありません!」

背筋を伸ばし、美緒は頷いた。「わかりました。みんなが受けているのなら、私も当然受けるべきです」

「二番目のステージは何なのでしょうか?それとも、先ほどのは練習で、これからが本当の一番目のステージなのでしょうか?」

非常に真面目そうに尋ねているように見えたが、実は由紀に罠を仕掛けていた。

これだけの人前で、しかも体面を重んじる由紀は、本来そう言うつもりだったのだが、美緒に先を越されてしまい、そう言い出しにくくなってしまった。

仕方なく、由紀はがっかりして言った。「先ほど一番目のステージをクリアしたと言ったからには、練習なんてありえないです。我が社を何だと思っているのですか!」

「私の会社でもあると思いますよ!」美緒は自然に応じた。

由紀「……」

「もういいです。そんなお世辞は私の前では言わなくていいです。私はそんなのに騙されません。今日の一番目のステージをクリアしたからといって、まだ二つ残っていますよ。この二つは、徐々に難しくなります。負けても泣き言を言わないでほしいものです」

「ご安心ください。私も課長と同じく、言行一致です!」

特に最後の言葉を強調して言ったため、由紀の表情は良くなかった。「よし、今日の会議はここまでです。解散!」

解散の言葉が出るや否や、待ちかねていた人々は、すでに片付けていた物を手に取り、立ち上がって次々とオフィスを出て行った。

美緒は二人の話がまだ終わっていないことを知っていたので、そのまま立ち止まって待っていた。

案の定、全員が出て行き、ドアが閉まると、由紀は立ち上がり、両腕を伸ばしながら体を伸ばし、こう言った。「今日の一番目のステージはあなたの運が良かっただけです。これからの二つのステージは、そう簡単ではないですよ。私のところでごまかして通り抜けるのは、そう簡単じゃないってことを知っているはずです」
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status