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第28話

その小麦色の肌と健康的な筋肉に、美緒は思わず指で触れたくなるほどだった。

無意識のうちに唾を飲み込む音がした。ゴクリ。

「美緒、美緒?」

返事がないので、哲也は電話が切れたのではないかと疑い、続けて呼びかけた。

その時、美緒は目を見開いて、耀介の大きな体が自分に近づいてくるのを見ていた。そのかっこいい顔がどんどん近づいてくる。

彼女は息を止めた。そして—

唇が触れそうになった瞬間、彼は顔を少し傾け、彼女の頬の耳に近いところに軽くキスをすると、すぐに身を起こし、そのままクローゼットに入っていった。

「パン!ガタン!」

手から滑り落ちたスマホが、カーペットの上で二回転した。

カーペットがあって良かった。そうでなければ、スマホはきっと粉々になっていただろう。

電話の向こうで返事を待っていた哲也は、鼓膜に強い衝撃を受け、急いで携帯を遠ざけた。

少し慣れると、すぐに叫んだ。「美緒!一体何をしているんだ?!俺の話を聞いているのか?」

スマホを拾い上げて立ち上がった美緒は、電話からの怒鳴り声を聞いて、慌てずにスマホを拭き、傷がついていないことを確認してから言った。「社長、何か用件があれば、はっきり言ってください。」

「あなたは--」

哲也は怒りを抑えて、事態が解決するまでは彼女の気まぐれを我慢しようと自分に言い聞かせた。

「こういうことだ。記者会見のことだが、今夜に決まった。すぐに会社に来てくれ。その前に一度会って、どう話すのか打ち合わせもしよう。できるだけ早くこの事態を収束させ、会社への悪影響を最小限に抑えよう」

美緒は笑った。「私への悪影響はどうなの?」

「……」哲也は少し黙った後、優しい声でゆっくりと言った。「美緒、今回の件が会社に大きな影響を与えることは分かっているだろう。新若は君と俺の心血だ。君もそれほど尽くしてきたんだから、会社に何かあってほしくないだろう」

「聞いてくれ。今回は少し我慢して、この件が終われば、会社の知名度と影響力は大きくなり、すぐにもう一段階上がれる。そうなったら、俺たちは結婚しよう。どうだ?」

結婚か。はっ!またその言い訳か。毎回これでなだめようとする。

もう、気にしていない!

「そうね」

少し間を置いて、彼女は説得されたかのように言った。「あなたの言う通りよ。会社には私も多くの心血を注いできた。何もあっ
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