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第260話

「もちろん成功したよ。私の催眠能力と強力な幻覚剤を組み合わせれば、あの男は今夜、私の暗示通りに自殺するだろう」

雅彦が今夜除かれることを聞いた麗子の目には、喜びの色が一瞬浮かんだ。

どうせ雅彦は今、半死半生の状態であるし、彼が本当に死んでも、他の人たちはただ彼が恋愛のもつれで自殺したと思うだけで、他に誰かが関わっているとは思わないだろう。

その時になれば、菊池家のすべてが彼らの手中に収まり、何をするにも自由だ。もう誰の機嫌を取る必要もなくなるなどと考えた。

麗子は、これからの権力と栄光の日々を想像し、早く今夜の十二時が来て、雅彦が窓から飛び降りる瞬間を目にしたくてたまらなかった。

「心配しないで、大師。今日の計画がうまくいったら、約束した報酬にさらに半額を追加するわ」

「約束だ」

男は、大金が手に入れると聞いて、不気味な笑みを浮かべた。その笑みは、見る者の背筋を寒くさせるものだった。

......

日が沈み、夜が更けていった。時間がゆっくりと過ぎ、ついに深夜が訪れた。

雅彦はベッドで眠っていたが、突然、何かの指示を受けたかのように目を覚ました。

彼は無表情のままベッドから起き上がり、大きな窓へと歩み寄った。

部屋の中には、小さなナイトランプだけが灯っており、光はほとんどなく、薄暗かった。

雅彦は手探りで窓を開けると、冷たい風が一気に吹き込み、薄手の病衣がすぐに冷たさを感じた。

しかし、この寒さは彼のぼんやりした頭を覚ますどころか、逆に彼を心地よくさせた。

雅彦は窓際に立ち、下を見下ろした。ここは13階の高層ビルで、夜なので、本来なら何も見えないはずだった。

しかし、今この瞬間、彼は暗闇の中に、どこか見覚えのある人影が、彼を見上げているのをはっきりと目にした。

「早く降りてきて、早く!」

桃が彼に手を振り、笑みを浮かべていた。あの笑顔は、もうずいぶんと長い間、彼女の顔に浮かんでいなかったものだった。

雅彦は目を見開き、もっとよく見ようとした。彼の体は、ゆっくりと窓から身を乗り出し始めた。

彼は自分が桃にどんどん近づいているように感じた。

だが、雅彦の体が半分ほど窓から乗り出そうとしたその時、背後のドアが突然開かれ、美穂が狂ったように駆け寄り、彼を抱きしめて引き戻した。

美穂は長い間悩んだ末に、ついに戻ってきて、雅彦の様子を見
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