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第2話

「誠司、あなた、どうして…どうしてこんなことができるの」

胸が締め付けられるような痛みを感じながら、彼の胸ぐらを掴んで叫びたかった。

「橋本美弥が、私を殺したんだ」

しかし、彼の体に触れられず、手がすり抜けてしまった。

「松脂はおそらく死ぬ直前にかけられたのだろう」

「腹腔にも強酸性の物質が注入されている。内臓はすべて溶けて腐敗している。そうでなければ、体内の腐敗がここまで抑えられるはずがない…あれ」

冷静に分析していた林原誠司だったが、私の腹腔を開いた途端、眉をひそめた。

「どうしたんだ」

諏訪部警部が心配そうに尋ねる。

「死者は、妊娠していた女性だ」

林原誠司は、珍しくため息をつき、私の乾いた遺体を裏返して諏訪部警部に見せた。

「しかも、犯人は子宮にも松脂を流し込んでいるため、胎児は驚くほど綺麗な状態で保存されている」

「クソッ」

「なんて外道なやつだ」

諏訪部警部は驚きと怒りのあまり、解剖室に響き渡るような大声で叫んだ。

私は雷に打たれたように、自分の遺体のお腹を見つめた。

小さな命はまだ形になり始めたばかりだった。

頬とへその緒が寄り添い、目を閉じた姿は、まるで眠っているかのようだった。

しかし、彼は、生きたまま殺されたのだ!

激しい悲しみがこみ上げてきて、体が爆発しそうになった。

しかし、魂には涙も体もない。

ただただ、声にならない叫びを上げ、空気を掴もうと手を伸ばした。

「赤ちゃん!私の赤ちゃん」

この子は無事に生まれてくるはずだった。

可愛い服や靴をたくさん用意し、ミルクの作り方を調べ、10個以上の名前を候補に挙げたのに…

しかし、このすべては、橋本美弥によって奪われた!

林原誠司は、長い沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。

「死者の骨と内臓は、粉砕され高度に密閉された状態で腐敗しているため、DNAを抽出することはできない」

「唯一の方法は、松脂に包まれた胎児を切片にすることだ」

一瞬、私の頭は真っ白になった。

どういうこと?

私たちの子供をバラバラにしようとしているのか?

「誠司、やめろ」

「赤ちゃんを傷つけることは許さない!聞こえたか!おい」

激しい悲しみと怒りで体が震え、何度も叫んだが、何も変わらない。

「カンカンカン」

林原誠司は、小さなハンマーとノミを使って、子宮から胎児を取り出した。

手のひらほどの大きさもない塊だった。

「誠司、できるだけ早く結果を出してほしい」

諏訪部警部は、苦しげにため息をついた。

「死者と、この哀れな子供のために」

林原誠司は何も答えなかった。

彼は、静かに胎児を見つめ、突然顔を上げて尋ねた。

「最近、上谷月華の情報を見つかったか」

「え?あの人か」

突然の話題転換に、諏訪部警部は戸惑った。

そして、苛立った表情を見せた。

「言うんじゃないよ!影も形もない。それに、やったことを思い出すと腹が立つ」

「機密研究員でありながら、最高の待遇を受けていながら、国の最高機密の研究成果を盗んで海外に逃亡するとは!」

そう言うと、諏訪部警部は壁を思い切り蹴って、「売国奴と何が違うんだ」

「違うよ」

「私はそんなことはしていない」

「すべては、橋本美弥の嘘だ」

私は必死に叫んだ。

向こうに、私の声が届くように足掻いたが、だめだった。

この時、林原誠司は冷静に言った。

「だから、あの人を国際指名手配することを提案したんだ」

「更に、これまで発表したすべての論文から、上谷月華の名前を削除するようとお願いした」

「あの人のプライドの高さを、誰よりも僕が知っている」

「こうすれば、あの人は焦って姿を現すかもしれない」

私は頭からつま先まで冷たくなった。

誠司、よく私のことを知っているわよね…

でも、どうしてこんなふうに使うの?

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