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第10話

「誠司」

解剖台の上の私の遺体を見た橋本美弥の顔色は、みるみるうちに変わった。

すると、彼女は無理やり笑顔を作った。

「最近、疲れているのはわかってるよ。でも」

「足が折れた前に、君はどこにいたか」

林原誠司は橋本美弥をじっと見つめた。

まるで、彼女をすべて見透かすかのように。

「騙さないで」

「あたし、ずっと研究所にいたわ」

橋本美弥の視線は泳ぎ始めた。

「誠司、どうして急に昔の話を持ち出すの」

林原誠司は彼女から目を離さなかった。

「それを証明できる者はいるのか」

「それは」

「林原さん、あの時研究所の監視カメラが壊れていたのは、お前も知っているだろう」

斉藤は、怒って彼の言葉を遮った。

「林原くん、ここで話をそらすのはやめろ」

新井先生も、彼の鼻先を指差して叱責した。

「君が美弥にプロポーズしたし、子供を身ごもらせたんだぞ」

「なのに、今日は何を血迷ったか、結婚式をぶち壊したとは」

「きちんと説明しないと、今日はここを壊してやる」

そう言うと、新井先生は斉藤から棒を奪い取り、私の遺体に向かって振りかかかろうとした。

「やめろ」

林原誠司は、慌てて私の遺体をかばおうとした。

諏訪部警部も棒を奪い取った。

「いい加減にしなさい」

諏訪部警部は新井先生を睨みつけた。

「真実を知りたければ、今すぐ口を閉じてください」

「さもないと、強制的に退去させていただきます」

新井先生は、いつも尊敬を集めていた。

どこへ行っても、尊敬され、ちやほやされてきた。

そんな彼が、こんな風に言われて、言葉を失った。

「君!君、君、君」

「橋本美弥、今、私の質問に答えなさい」

諏訪部警部は新井先生を無視して、橋本美弥を鋭く見つめた。

「伊藤健次郎とは、どのような関係ですか」

橋本美弥はぎょっとした。

「あたし、美弥は、そんな人知りません」

「いや、美弥は知っている」

林原誠司は慎重に遺体を元の位置に戻し、橋本美弥を憎しみのこもった目で見た。

「伊藤健次郎は彼女を海外で女優にすると言っていた大物だ」

「では、あなたは海外で、どのような活動をしていましたか」

諏訪部警部は、威厳のある声で尋ねた。

直接的な表現は避けたが、警察がここまで聞くということは、すでに十分な証拠を掴んでいるということを橋本美弥に理解させ
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