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第7話

彼らの会話を聞いて、心は窒息するほどの痛みで満たされていた。

斉藤は両親が亡くなったから、いつも質素な生活を送っていた。

私はこの子を支えようと、寒い日には服を買い、病気の時には看病した。

失恋して泣き崩れた時でも、私がそばにいて慰めた。

その時は、実の姉以上の存在だと言って、将来は私が死ぬまで面倒を見ると約束してくれた。

なのに、今、私の潔白を信じない。

私をやつといい、売国奴呼ばわりするなんて?

「おやおや、遅れたかい」

その時、優しい声が届いてきた。

人々が道をあけた。

来るのは白髪で矍鑠とした老人が、優しい笑顔で近づいてきた。

2つの大きな赤い封筒を新婚夫婦に授かった。

「林原くん、美弥くん、おめでとう」

それは、私が最も尊敬する恩師だった。

研究所の責任者でもある、新井先生だ。

「ありがとうございます、先生」

橋本美弥は甘ったるい声で礼を言った。

新井先生は林原誠司にこう言った。

「美弥くんを大切にするんだよ。この子はここまで来るのに苦労したんだ」

林原誠司は、真剣にうなずいた。

「もちろんです」

しかし、斉藤はまたしても口を尖らせた。

「上谷がいなければ、美弥さんほど才能のある人は、こんなに苦労することもありませんでした」

橋本美弥は、慌てて彼を叱った。

「斉藤くん」

「まあ、彼の言うことも一理ある」

新井先生はため息をついた。

「当時、あんなに上谷くんを信頼していたのに」

「結局、実験データがすべて破壊されてしまった。あの恩知らずに」

「美弥くんが、この数年、寝食を忘れて再計算してくれたおかげで、私たちのプロジェクトは完全に失敗せずに済んだんだ」

「あの人はあのまま外で死ねばいい」

「もし捕まったら、自分のこの手で、あの裏切り者を殺してやる」

先生の言葉はまるでナイフのように私の心を抉った。

それは、死ぬ前の痛みにも劣らない。

新井先生は携帯電話を取り出して彼らに画面を見せた。

「すべての証拠と資料を提出した。上谷月華の名誉はすべて剥奪され、国家から正式に国際指名手配された」

「これを君たちの結婚祝いにしよう」

私はまるで氷の中に突き落とされたようだった。

彼らは…本当にそんなことをしたのか?

どうして?

一緒に暮らしてきた夫も、大学から職場でも何年も一緒に過ごしてきた恩師
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