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第96話

話を聞くまでは、お爺さんが私と江川宏の離婚を考え直すように言うのかと思っていた。

しかし、そうではなかった。

お爺さんの命の灯火が次第に消えていくのをはっきり感じることができ、声も非常に弱くなっていた。「どうか、どうか……江川アナを嫁にしないで、江川家を守ってくれ」

「はい、わかりました……」

私は押しつぶされそうになり、泣きながら頷き続けた。「お爺さん、江川アナが何か話したのですか、それで突然体の具合が悪くなったのでは……」

「彼女は……」

お爺さんの瞳に嫌悪と怒りが浮かび上がったが、それはため息に変わった。「私が言ったことをよく覚えておいてくれ」

「はい、南は覚えておきます。一言一句漏らさずに」

私は声を詰まらせながら口を開いた。これ以上は聞きだせなかった、またお爺さんを怒らせるんじゃないかと心配だったからだ。

しかし、疑問の種は心に植えつけられてしまった。

江川アナが絶対にお爺さんに何かを言ったのだろう。

「いい子だ。悲しまないでおくれ、お腹の子をしっかりと守ってあげるんだよ」

お爺さんは最後の力を振り絞って、優しく微笑んで言った。「そうすればお爺さんは安らかに眠れる……」

「ピーッ」

アラーム音が鋭く長く響いた。

私は目を閉じたまま微笑みを浮かべているお爺さんを見つめ、瞬時に崩れ落ちた。

お爺さんは全て知っていた……

私が妊娠していることをすでに知っていたんだ!

でも、一度も尋ねてくることはなかった。

私は病床の端を掴み、ゆっくりと地面に膝をつくと、涙が止まらなかった。「お爺さん、南はできます……あなたが託した言葉、私は必ずやってみせる!」

お爺さんにまだこの言葉が聞こえていて、安心して旅立てることを祈った。

「お爺さん!」

しばらくして、後ろから馴染みのある無力な声が聞こえてきた。

彼の想い人は、やっと開放してくれたのかしら?

江川宏はショックを受け、言葉を詰まらせて尋ねた。「南、お爺さんは、お爺さんはどうしたんだ……」

「お亡くなりになりました」

私は静かに答えた。自分自身が空っぽになったようで、涙が音もなく黙って滑り落ちていった。

数十年ぶりに再び親族を失うというのは、こんな感じなのだな。

あの時よりももっと深く辛い。

鈍いナイフで刺されるようにじっくりと苦しめられていく感覚。泣き叫びたいが、何
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