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第97話

お爺さんの言葉を繰り返し思い出した。

以前、お爺さんは江川宏と江川アナが一緒になることに同意していなかった。彼女は腹の内が複雑な人間だったからだ。しかし今日……以前とは全く違うようだった。

江川アナはお爺さんに一体何を話したのだろう。

車が江川家の邸宅に入った。私は直接降りてここから去ろうとしたが、江川宏が大股で追いかけてきて、私を抱きしめた。

私は身体を硬直させた。彼は頭を私の肩に埋めて、少し頼りなく心細い調子で言った。

「南、一晩一緒にいてくれないか」

「たった一晩だけ」

「お願いだから」

彼の言葉を聞いて、昼間書斎で見た診察記録が私の頭によぎった。私は思わず同情心を抱いた。「わかった」

この邸宅の中の雰囲気は重たくなった。ただお爺さんがいなくなっただけで、家全体がこの夜に突然空っぽになったように感じられた。

寝室に戻ると、私はシャワーを浴びた。出て来た時には江川宏の姿は見当たらなかった。

夜更け頃に後ろから誰かが抱きしめてきた。寝返りを打って確認するまでもない、それが誰なのか私は分かっていた。

なぜか、今夜の江川宏の一挙一動に悲しみを感じ取った。

「寝ちゃった?」

彼は額を私の頭に押し付け、とても小さい声で尋ねた。

私はそれに返事もせず動きもしなかった。しばらくして、彼の元気がない声が聞こえてきた。「南、俺はお爺さんをとても失望させただろうな。お爺さんが亡くなる直前にも、そばにいてあげられなかった」

「……」

江川アナのあの下手な嘘と演技でさえ、彼は喜んで信じるのだ。

もうこうなってしまったのに、私に何を言えというのか。

彼の声はかすれていた。「お爺さんは俺を責めていたか?」

私はカーテンの隙間から差し込む月明かりを見つめながら「私はお爺さんに何も言ってない。お爺さんが生死の境を彷徨っているときに、お腹が痛いなんて嘘をつく江川アナと一緒にいたことをね」

生まれて初めて私はなんて残酷な人間なんだろうと思った瞬間だった。

慰めているふりをして、相手を傷つける言葉だった。

「ごめん……」

江川宏は後悔しながら言った。「俺は少し彼女をなだめたかっただけで、すぐにお爺さんのところに行くつもりだったんだ」

「そんなのどうだっていいわ」

これ以上威圧する言葉を吐きたくなかった。ただ「私に謝ってどうするの、謝るべき相手は私では
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